アンティーク・スペシャリスト発表会 ~続き~

<後半の部>

永瀬 明

テーマ:ジャン・コクトーゆかりのサン・ブレーズ礼拝堂

概要:以前訪れたサン・ブレーズ礼拝堂についての感想

パリから50kmほど離れたフォンテーヌブローの近くにあるミリー=ラ=フォレという小さな町を紹介、ジャン・コクトーは1947年、パリの喧騒から逃れて恋人のジャン・マレーと共にこの地に住み始めます。その後のコクトーの新しい恋人デルミもこの地を頻繁に訪れ、コクトー没後は彼の作品群を保存し現在ではジャン・コクトーの家となっていますが、その町にある、元ハンセン病院の付属であったサン・ブレーズ・デ・サンプル礼拝堂を訪問されたときのレポートを、多くの写真やご自身のコレクションとしてご購入されたオリジナル・ポスターなどを持参して、臨場感あふれるご説明をしていただきました。コクトーがデザインしたステンドグラスの光の効果に関する考察なども注目に値し、またコレクションのポスターについて、監修者よりその保存状態の良さが評価されました。

目黒 佐枝

テーマ:ナポレオンのダイヤモンド ~マリ-・ルイーズに贈ったネックレス~

概要:カットからアンティークと分かるポイントと科学的検査で知るダイヤのタイプ別選別

本場アメリカで宝石学協会G.I.A G.Gの資格をもち、ハイ・ジュエリーブランドであるヴァン・クリーフ・アーペルやシャネルなどの宝石部門での勤務経験のある目黒氏による、ダイヤモンドの選別についてプロの世界のお話をいただきました。ダイヤモンドから読めるアンティークの希少性、科学的エビデンスに基づいたダイヤモンドの産地や時代の推定の方法について、アメリカ・スミソニアン美術館に展示されているマリー・ルイーズのネックレスを例に、ダイヤのカットと原石の関係、また現代の技術である紫外線・赤外線を使用して鑑別したタイプ別のお話、さらには産地についての歴史まで遡り、インド産のタイプIIAであると推定されるに至る、その導き方を分析されました。

現在は精密にカットをされて綺麗に輝く宝石を望む人が多いということで、その点アンティーク・ジュエリーのカットは少々の野暮ったさが否めないものの、アンティーク好きは原石の形が感じられるカットを好む傾向にあるといい、目黒氏のアンティーク・ジュエリーを見る時に原石の形を感じながらその素朴な「たまらなくいい」と思えるアンティーク・ジュエリーへの愛が感じられるご発表でした。

小山 ひろ子

テーマ:手仕事から紐解く人間の文化史

概要:過去の手仕事、針仕事を見ると、その時代の様式や政治などが見えてくる。

長年手芸関係の出版に関わってきた小山氏による数多のコレクションの中から、この1年で手に入れた稀覯本(ウィリアム・モリス関連書籍『News from nowhere or an eoch of rest』、『The story of the glittering plain or the Land of Living men』、『Decorative NEEDLEWORK』、ウォルター・クレインの挿絵、シャルダンなどの手芸書、『エリザベス女王の祈祷書』、『メアリ・スチュワートの時祷書』のファクシミリ版など)、アンティークレース、シルバー・フィリギリの針道具などを紹介いただきました。主催されたアンティーク・レース関連セミナーや企画を手がけた雑誌や書籍を通して、手芸道具から見える人間の文化史について「装飾」に焦点を当て、今後の研究への豊富を語られ、監修者より、刺繍の部分は未開拓分野だけに是非研究を進めてほしいとの助言がありました。

石田 亮子

テーマ:お茶時間を彩るシルバーカトラリーの魅力

概要:ティーパーティーには欠かせない魅力的なシルバーカトラリーとの出会いを通して、古き時代のお茶時間の考察

中国茶マイスターの資格を持つ石田氏による、「古くて美しいものを現代の暮らしにどう活かすか」について、1)英国式ティーパーティでのシルバーカトラリー、2)装飾の魅力、3)現代のテーブルコーディネート、の3点より考察されました。中国茶ではあまり使われない銀器に関して、陶磁器の紅茶セットと銀食器がなぜ合うのか、アフタヌーン・ティーが生まれた理由、「マダムの生活発表会」の場としての銀器の扱い方、コレクションしたくなる理由は何か、生活様式の変化とともに日常の生活へどう古いものを活かして取り入れていくか・・・実際に氏のコレクションを披露されながら、これらを1つ1つ、現代の「おもてなし」の意味を踏まえながらのお話をいただきました。