日別アーカイブ: 2016年8月1日

モードとアンティーク

 7月のAEAOサロン倶楽部では、「モードとアンティーク」をテーマに行いました。モード(=ファッション)、最近やたらとモードの展覧会が行われています。
 

 2016年に入ってからでも、
 

・PARISオートクチュール 世界に一つだけの服(三菱一号館美術館)
・MIYAKE ISSEY展(国立新美術館)
・MODERN BEAUTY フランスの絵画と化粧道具、ファッションにみる美の近代(ポーラ美術館)
・ポール・スミス展(上野の森美術館)
・こどもとファッション展(東京都庭園美術館)
 

と、数多くの展覧会が開かれていますが、そもそもモードをテーマにした展覧会は、かつてこんなにあったのでしょうか。
 

pola_modernbeauty
 
 

 モードは装飾美術を語る上で、家具や工芸品を語る以上に、重要なファクターです。家具や工芸品と同様に、もともとは貴族の趣味を反映していたものが、時代とともに社会を反映するものに変わり、スタイルもその時代のニーズに合わせて変化していく・・・その歴史を紐解いていくことは、同時に社会風俗史をあらためて知ることでもありますね。
 

 そしてモードといえば、今は女性が主体ですが、かつては逆で、男性のモードこそが注目されていました。女性は男性に比べてうんと地味だったのです。男性が今のように、黒っぽい色の衣装で、装飾が控えめで地味なスタイルになったのは、ダンディズムが起こった、たかだか19世紀以降のこと。それまでは、男性はリボンとレースで飾り立て、ハイヒールを履いていたのです!
 

 ズボンについても同じ、現在では半ズボンは子供のものか、カジュアル着であって、まともな大人の男性は、きちんとした場所で半ズボンなんて履きません。一流レストランなど、ジーンズ&半ズボンお断り、なんて言われるところもあります。でも、かつては半ズボン=キュロットこそがまともな紳士のズボンであり、男性はみな脚線美を競っていたと言います。フランス革命時に、キュロットを履く貴族に対抗して、サン・キュロット(長ズボン)を履いて、貴族社会に真っ向から戦いを挑んだ市民たち・・・当時、サン・キュロット(長ズボン)はおそらく洗練の真逆、今でいう超ダサい格好だったのです。
 

 歴史は繰り返す、流行も繰り返す、と言われているように、現在の「洗練」の基準は、またどこでどう変わるのか、追っていくのは楽しみでもあります。たかだか四半世紀前のバブル時のファッションですら、今では恥ずかしいスタイルになっていますから、今の流行が四半世紀後、どのように懐古されているのか、これを見届けるのも楽しみの一つですね。