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第12回アンティーク検定講習・2級 <前半の部>

この週末はアンティーク検定講習・2級の講習会が開催されました。2級は4日間の集中講習で資格を取得できます。まずは前半2日間の講習です。

今回はすでに過去に3級を試験で合格した6名の受講生、遠くは福岡や水戸からご参加いただきました。

最初に自己紹介を兼ねてアンティークの思いなどについて各人語っていただいたのですが、「人生を変えるきっかけ」にこの世界に入った、という方が多く、古く美しいものに心を奪われて、という共通の美の意識がある方々です。中にはすでにアンティーク・ディーラーとしてお仕事をされている方もいらっしゃって、頼もしいネットワークですね。

1日目は東京芸術劇場で終日行う座学です。テーブルウェアの歴史をざっと学んだ後、鑑定とは何をするのか、実際に品物をいきなり渡されての鑑定の練習。これは何のために使う何なのか、といった品名がわからないものから、この刻印はあれかな、これかな、と鑑定への道標を掴めたものまでさまざま。

みなさんでの懇親を兼ねたランチを挟んで、午後は西洋美術史の通史のお勉強。西洋美術史というと絵画・彫刻を扱うのでアンティークとの関連性がイマイチわからない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも純粋美術(絵画・彫刻)と応用美術(装飾・工芸)との間には密接な関連性があります。「バロック」「ロココ」といった様式名も共通して使う言葉ですし、西洋アンティークを知る上で欠かせない教養として、ルネサンスから19世紀までの美術史をマラソンで通しました。一度も西洋美術史を学んだことがない方は、一度は通史で学んでみることをおすすめします。一度頭に入れておくと、(微細な部分は忘れても)アートの流れというものが身についてきますよ!

2日目、午前はオンラインによる講習でアート・マーケットに関する事象と、建築・家具・装飾について学びました。アート・マーケットという分野も一般には学ぶ機会がなかなかないと思います。1日目の美術史は大学でも専攻がありますし、巷のカルチャーセンターなどでも多くのコースが存在、書籍も多く発行されていますが、マーケット(市場)をアート分野に限って学ぶというのは、本講習でしかないかもしれません。日本の世界におけるアートシェアはどのくらいなのか、なぜ日本で世界的なオークションが開催されないのか、日本のアート購入に関する特殊事情とは何か、といったマーケット事情から、話題となっているアートニュースに関してどうやってアンテナを張っていったらよいのか、世界的なアートフェアやアンティークフェアはどこで開催されているのか、ざっと俯瞰してみました。

午後は前半の課外授業で、今回は明治期の建築の卒業制作とも言われた「迎賓館・赤坂離宮」を訪れました。午後3時に正門で待ち合わせをしたのですが、それまで雨模様だった東京も雨が止み、太陽が現れ始めましたよ!

正門から写真を撮り、チケット売り場の西門へと周ります。そして本館と庭園の見学。この赤坂離宮は現在は迎賓館として使用されていますが(国賓が誰もお泊まりにならない期間はこのように一般開放されています)、創建当時は東宮御所として、そして昭和天皇が短い期間お住まいになられたものの、皇室の方々があまり積極的に住みたがらなかった宮殿と言われており、戦後国の所有になってからは一時は国会図書館として利用されていました。その後何度も改修を経て現在の形になっているのですが、様式建築・様式家具のお手本が鑑賞できるのです。

ルネサンス様式の室内装飾、ルイ16世様式の室内装飾と家具、そしてアンピール様式の室内装飾と家具が部屋によって分かれており、外観の建築はネオ・バロック様式。これも西洋の様式を学ぶと、とても理解しやすいですね。

残念ながら内部は写真撮影が不可のため、外観と庭園しか写真は撮れませんが、バロック建築宮殿には欠かせない噴水にもちゃんとお水が供給されていました。

宮殿内部を鑑賞した後は主庭と前庭を散策し、2日間の講習が終了いたしました。

アンティーク検定講習・2級の後半は11月に行います。受講生のみなさま、2日間の講習、大変お疲れ様でした。

第12回アンティーク検定講習・3級

この週末はアンティーク検定講習・3級を実施いたしました。2018年よりアンティーク検定は試験と並行して講習形式でも行われ、年2回実施されていますので今回で6年目・第12回となりました。大人の習い事は楽しく学びたいもの、年1回の試験で一発勝負で臨む人ももちろんいらっしゃいますが、講習に参加して一からゆっくり学ぶ、というこの講習コースも人気です。なんといっても出席して受講すれば資格が取得できるのです!

2日間で3級のレベルをすべて網羅するのですが、興味があれば知識ゼロで受講していただいても全く大丈夫。アンティークとは?西洋とは?美術と装飾美術の違いは?といったきほんのき、から講習がスタートします。

初日は「アンティーク入門」「陶磁器入門」「ガラス入門」「銀器入門」。どの分野もまずは広く浅く、要となることを覚えていきます。

ー陶磁器の分類は?

ーボーン・チャイナってなあに?

ーヴェネツィアのガラスとボヘミアのガラスの違いは?

ークリスタルって普通のガラスとどう違うの?

ー純銀ってどうやって見分けるの?

こんなアンティークの基本を学んだ後に今年7月に行われたアンティーク検定試験・3級の問題を解いていくと、あら全部解けるじゃないですか、ということに。一人で「西洋骨董鑑定の教科書」を読んでいてもなかなか頭に入らなかったことが、一気にクリアになったようです。

陶磁器・ガラス・銀器の基本的な鑑定も実際のアンティーク品を触りながら行っていきます。この講習は鑑定品のお土産付き、今回はクリストフル社が某ホテル用に制作したアイスクリーム・スプーンが鑑定品でしたよ。

2日目の講習は「様式」「家具・建築」をオンラインで受けたのち、外出・見学を行います。今回は旧前田侯爵邸へ。東洋一の大邸宅と言われ、使用人だけで100人いたと言われる戦前の上流階級の館、チューダー様式とは、和洋館並列住宅とは、金唐革紙とは、と見どころ満載な見学地です。

2日間の集中講習は修了、カフェにて修了証授与&懇親で無事終了いたしました。

次回3級の講習は2024年1~2月を予定しています。どなたでもご受講いただけます。

第11回アンティーク検定講習・3級

2018年の講習制度スタート以来、例年1月はアンティーク検定講習会を開催しています。この時期はこの3年間というもの緊急事態宣言が出たりまん防が出たり、そうでなくても例年インフルエンザの流行したりと人によっては都合の悪い時期だったりするのですが、今回は諸事情により、本講習をマンツーマンで行いました。

受講者さんはかつてイギリスに在住経験もあり、また西洋文化に興味関心の深い方、ワインやチーズの資格もお持ちです。この度、西洋文化の砦とも言える「アンティークの世界」を極めたい、という積極的ご意向で、すでに過去の検定の過去問などもダウンロードしてご準備をされていました。

初日はいつものように会場講習、face to faceですのでどんな些細なことでもわからない箇所は聞きながら進めましょうねということで、アンティークとは何か、装飾美術とは何か、という概論からスタート、そして陶磁器、ガラス、銀器の基礎を一緒に学びました。この3分野は、すでにコレクションしている人も多いながらも、体系的に学んだことがないケースがほとんどで、たとえば何気なく使われる言葉「ボーン・チャイナ」「染付」「クリスタル」「プレスガラス」「シルバー」「ブロンズ」といった言葉などについてもあらためて歴史やその国々での特徴などをまとめました。

目利きになる早道はとにかく手に取って触って確かめること、そのためには興味のあるものからでよいので自分で身銭を切って買ってみること、これに尽きると思います。美術館で見て学ぶのも大切ではありますし、実際美術館の展示物はほぼ「間違いのない」ものばかりですが、そこで学べるのは限界があります。例えばアンティークのマーケットに関して。これは自分で実際にお金を払うとなったら、そのものについての内容はもちろんのこと、現在の市場価値、そして自分への対価としてふさわしいかどうか・・・色々なことが頭をよぎりますよね。その思考の過程がやがて目利きへとつながっていくのです。

よく「これはXXですか?」と正解をすぐに知ろうとする、答え合わせが大好きな人がいます。こういう人は性格がよい人が多いのですが自分で考えたり調べたりしてみないので、逆に間違ったものをつかまされる危険もあります。売主も騙そうとして売るわけではなくても知識が足りないこともあります。なんといっても古物はその製造に関する詳細が出自を含めてすべてわかっているわけではないので、すべて想像して仮説を立てていく、これが鑑定なのです。

そのために、まずは気軽なテーブルウェアはよい材料になるのではないかと思い、3級の初日にこれらの鑑定物を受講者さんへプレゼントし(これも講習費に含まれています、食事も付いていて検定講習はとてもお得なのですよ!)、鑑定してみましょう、と宿題を出して初日は終了。

2日目の午前はzoomにて、建築と家具の様式についてバロックからモダニズムまでを俯瞰します。この500年を1時間半ほどで行うので、超特急。一気に聞くと頭の中が混乱するかもしれませんが、まずは流れだけを知って、あとは教科書をゆっくり読んで復習してくださいね。

午後は見学で、今回は東京都庭園美術館で開催中の展覧会「交歓するモダン、機能と装飾のポリフォニー」展を見に行きました。午前にレクチャーで出てきたアール・デコの建築として申し分のない建物、また展示の内容は1910年代から30年代までの機能主義に基づくモダニズムの作品の数々ーウィーン工房、ドイツ工作連盟、バウハウス、果てはポール・ポワレのモードからジャン・デュナンの漆まで、そして彼ら西洋に影響を受けた同時代の日本人作家の作品の展示もあり、とても見応えのある展覧会でした。

『Nun』ピエール・シャロ―からのオマージュ CAFE TEIENのhpより

最後のディプロマ授与はCAFE TEIENにて。この展覧会用での出品作品・ピエール・シャローが1924年にデザインしたランプ「Nun(修道女)」にちなんだムースカシスショコラとダージリンをいただきながら、宿題の答え合わせを。今回はフランスのディナーフォーク&スプーンでした。刻印の読み方は自分の視力、ルーペ、採光など色々な要素がありますので慣れないと難しいですよね。

庭園美術館・茶室

丸2日間の、あっという間ながらも濃い講習が終了しました。邸宅を出るともう真っ暗、先に庭園内のお茶室や高台などを見ておいてよかったです!

3級のアンティーク検定講習、次回は9月の予定です。

また2級の検定講習は2月25日、26日、3月11日、12日と4日間で行われます。3級の合格者・修了者のみなさま、ぜひご受講をお待ちしています。

第10回アンティーク検定講習・2級

10月の土日計4日間で、第10回アンティーク検定2級の講習が開催されました。昨年2021年を最後に、現在2級は講習でのみ取得可能となっています(3級は試験・講習共に取得可能、1級は試験のみにて取得)。今回の参加者は、9月に3級の講習を修了した方、そして7月に検定試験で3級を見事合格された方で、みなさん3級での学びがまだ直近で残っているのでしょう、基礎が出来上がっている方ばかりです。

4日間で2級を試験での合格レベルと同等へ詰め込んでいくのですから、インプット量は半端ではありません。とはいえ本講習は受験予備校ではないので猛烈なガリ勉をして暗記するのが目的では決してなく、これからずっと装飾美術に興味を持って学び続けていくための、いわば「方法」を学ぶというのが目的です。口座あり、鑑定アトリエあり、見学あり、そしてランチ会、見学時のお茶会なども入り、楽しみながらの構成を心がけています。

第1日目・午前は、「鑑定」とは何か、定義は?真贋は?何をどう表現する?といった鑑定の基礎方法論を学び、実際に鑑定物を手にしてそれぞれが鑑定の実践を行います。鑑定品はそのままお土産でお持ち帰りできるという特典つき!ランチを一緒にし、午後は西洋美術史500年を一気にインプット。もちろんすべての作品や作家に触れることは不可能ですが、西洋美術史が古典を基軸としながら、時代と共にどのように変化していくのか、全体を俯瞰しながら学びました。

第2日目・午前はアートマーケット、そしてアートフェアや展覧会、最新のアート情報など現代時事に触れ、午後は旧岩崎邸の見学に行きました。内部は写真不可でしたが、この和館内にある茶房でお抹茶と生菓子をいただき、まったり。

第3日目・午前は、米国宝石学会G.I.A.G.G.の資格をもつ講師より、ジュエリー2000年の歴史、宝石の鑑別に関する授業を、ランチを挟んで午後はモードの歴史、そして複製芸術の見方という授業を行いました。

宝石鑑別は一般の人がそう滅多に行えるものではありませんが、プロはどういう道具を使ってどのような着眼点で見ていくのか、というノウハウに触れ、複製芸術では講師の所蔵品であるポショワール、グラヴュールに彩色、カラーリトグラフなどを手に取って、どれがどの技法で刷られているのか、実際にルーペで見ながら鑑定をしていきます。理論で理解してもモノを手に取っていざ鑑定!となると、その理論をどう当てはめるのか、戸惑いつつの体験です。

第4日目・午前は20世紀の二大様式アール・ヌーヴォー&アール・デコの概論とテーブルウェアの歴史を駆け足で学び、午後はアール・デコ様式の建物見学ということで、東京都庭園美術館に。本検定の監修者でもあり、かつて当美術館運営にも関わっていた岡部先生によるディープな見学は、この美術館に設置されていながら誰も語らない作品にまで触れていただき、充実度・疲労度ともに最高潮に。今回は茶室も見られました。

新館カフェにて、カフェ&ケーキでディプロマ授与となり、受講者全員が2級の修了証を手にしました。

ご受講者のみなさま、4日間大変お疲れ様でした。来年は1級の試験を目指して、どうぞ頑張ってくださいね!

第10回アンティーク検定講習・3級が終了

前週に続き、またもや台風でヤキモキした三連休でしたが、週末に第10回アンティーク検定講習・3級が開催されました。今回より受講形態もコロナ前に戻し、講師と受講者みなさんで顔を合わせての会場講習を基本としています。

3級はご存知の通り検定試験も実施されており、試験を受けて合格すれば認定証を得ることもできます。しかしながら講習を受ける多くの方が「一人で本を読んで勉強してもつまらない」「納得して学んで、きちんと理解したい」という理由でしょうか、お忙しい中、貴重な週末を割いてご参加される方の需要が高まっています。そして終了後「やっぱり(試験ではなく)講習にしてよかった」とみなさん仰るのですが、それはやはり資格の取得が中身を伴った、という実感から来るものだからでしょう。

3級の講習、たった2日間ではありますが、単なる講義オンリーではなく、講習・アトリエ(鑑定)・見学を通して「アンティークとは何か」「装飾美術って?」「様式って?」という西洋アンティークの基礎を学んでいきます。

初日は顔合わせのウェルカム・コーヒーに続き、「アンティークとは何でしょう?」と定義をみなさんで考えることからスタート。100年の関税法、古物を表す異なる言い方、西洋とは、ファイン・アーツとの違い、概念を整理します。

そして「陶磁器」入門。普段何気なく使っている「陶磁器」という言葉、陶器と磁器は何が違うのか、陶磁器のルーツはどこから来たのか、よく聞く「ボーン・チャイナ」って何?と陶磁器のいろはを学びます。

みなさんでのランチを挟んで、次は銀器入門。なぜ銀器にだけは昔から刻印が入っているのか、「純銀」ってどういう定義なのか、実際に売っている銀器をどうやって見分けたらよいのか、各種ルーペの使い方と共に実際にルーペと銀食器を手にしながら自分の目で確かめていきます。

目をかなり酷使しますので、刻印の判読に成功した方からGODIVAのガトーでお茶タイム。

陶磁器、銀器と経た後、初日の仕上げはガラス。ヨーロッパにおけるガラスの名産地は?それぞれのガラスの特徴は?クリスタルとガラスの違いは?ガラスの製法、加飾法について学びます。

最後に7月に行われたアンティーク検定試験・3級の問題で陶磁器・銀器・ガラスの箇所を一緒に解きながらのまとめを行いますが、さすがに学んだ直後とあって、みなさんすでに知識が身についています!

2日目、午前はZoomによる「様式」についてのお勉強。建築や家具という大きなものから様式は広まり、やがて小さなものにまで波及していくので、有名な建造物を見ながら様式を理解し、椅子やコンソールなどの家具でその様式がどのように表れているかを見ていきます。

そして午後は見学。今日は鳩山会館を訪れました。バラの剪定を終えたばかりで満開の時期には早いのですが、雨上がりの秋晴れとあって、多くの方が訪れていました。私たちも日本の洋館の歴史、様式建築とは?和洋館並列型にした社会的背景、鳩山会館の「アダム様式」とは何か・・・建築と家具を実際に触れ、ほどよい運動とお喋りのまま、場所を移しお茶とスイーツタイムを兼ねたディプロマ授与。ここでも多くの質問が飛び交い、やり残した試験問題も一緒に行い、若干時間をオーバーしつつもみなさんで楽しい2日間の講習を終えました。

引き続き10月の2級を受講される方、2級は来年早々に受講される方など、みなさん学びの講習を続けてくださるとのこと、頼もしい限りです。

次回のアンティーク検定講習・3級は2023年1月に予定しています。