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アンティーク談話とアランデュカスのレストランにて食事会

今日は3月の海外研修「プロヴァンスとリヴィエラのアンティークを巡る旅」の関連イベントをユーラシア旅行社さんに開催していただきました。

食事会の前に、アンティーク談話。集合はレストランの近くのワイン専門店のお店が経営するセミナー会場、普段はワインセミナーなどに使われているのでしょう、とても素敵な空間です。

今日の談話は、研修旅行で訪れるムスティエ陶器、そしてヴァロリス陶器についての歴史や特徴、テーブルウェアの変遷とベル・エポック期の装飾様式、そしてその時代に創設されたモンテカルロのオテル・ド・パリ、レーニエ3世が若いアランデュカスに「4年以内に3星を取るよう」依頼し、33ヶ月で見事3星を勝ち取ったルイ・キャーンズに関するお話を1時間ちょっとで駆け巡りました。

研修にご参加予定の方々以外にも、アンティークの世界が初めてでイベントに興味を持ったという方、かつて色々な国に住んでいて80カ国は訪れたという旅のベテランの方、食器のコレクションをされていて半世紀近く前にフランスに住んでいたという方等々、はじめましての方も交えて楽しく懇親しながらの座学講座を経て、すぐ近くのアランデュカスのレストラン「ブノワ」へ移動します。

「ブノワ」は、2005年にオープンしたアランデュカスのビストロで、南仏の邸宅を彷彿させてくれます。ちょうど私たちの訪問地ムスティエ=サント=マリーにもデュカスのオーベルジュがあるのですが(今回の日程ではまだ冬季休業中、4月の中旬にオープン)、その雰囲気を東京・青山で味わえるというわけです。

名物「エッフェル塔」の模型は、実際に1889年のパリ万博に向けてのコンペで出されたマケットの1つでオリジナルなのだそう。ところどころに演出されている装飾小物品はすべてフランスから蚤の市などでデュカス自身がセレクションしたアンティークとあって、もうすでに南仏に上陸した気分です。

今回は素敵な半個室を取っていただき、和やかな雰囲気でお料理を堪能することができました。食レポは文章にするとその魅力が返って損なわれそうですので、是非ご自身の舌でお確かめいただきたいと思います。ちなみに過去にブノワで食べたことがある方も含め、みなさん大満足のご様子でした。

ワインとお料理のマリアージュも、さすがのブノワさんのセレクション、しかもワインの入手方法のような舞台裏のお話までサービスでしていただき、今回はスパークリング、白ワイン、赤ワイン、とドリンクもフルコースにて(スパークリングワイン:ブルゴーニュ地方、シャルドネ100% / 白ワイン:アルザス地方、フルーティな味わい、桃や青リンゴのような香り / 赤ワイン:ボルドー地方、メルロー7割・カベルネ3割、果実味しっかり、渋み少なめ)

ショコラのデザートに焼菓子まで美味しくいただき、10階からの景色も十分に堪能できた楽しい会でした。ご参加者の中でプロ級のスケッチをされる方がいて、なんとお食事をしながらこんな素敵な作品を仕上げていただいたのです!

旅の満足度は天候とお料理で決まると言いますが、このようなイベントでも同じ、美味しいお料理で満たされた2月のひとときでした。ご参加いただいたみなさま、今日はどうもありがとうございました。


新潟日報「おとなプラス」にて取材

新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、昨年末に、新潟日報社の夕刊版「おとなプラス」に、西洋アンティークに関する記事が掲載され、当協会も取材を受けました。

報道部の佐藤直子さん自身もアンティークのコレクターとあって、アンティークの世界に入るまでの心情や、魅力の愉しみ方などを記事にまとめてくださっています。ご一読ください。


西洋骨董鑑定の教科書、ついに発売!

 この度、パイインターナショナル社より、「西洋骨董鑑定の教科書」がついに発売になりました。
 
 

 美術史を学ぶための書籍は巷に溢れているのに、装飾美術を体系的に学ぶための本はなかなか見つかりません。とはいえある分野に特化したものーたとえば「ウェッジウッド物語」(日経BP社)、「リモージュボックス」(平凡社)、「ウィリアム・モリス」(河出書房新社)、「魅惑のアンティーク照明」(西村書店)ーといった本ーはありますし、洋食器のブランドやお店紹介のような本もそれなりにあります。そもそも装飾美術とは、使って愉しむためのもの、堅苦しい理論めいた本などなくても、興味を持ってコレクションしていくうちに、自然と覚える・・・当協会の設立者もそのように思っており、いわゆる「教科書」「検定本」を作ることには、あまり積極的ではありませんでした。
 

 日本人は真面目なので、教本があれば、教本を読んでガリ勉してしまいます。英検受かっても、喋れないじゃないか・・・というのも、英検攻略本で効率よく勉強すれば、検定試験は受かる、でもそれって英語のコミュニケーションを身につけたことになる?というのと同じで、モノを見ないで触らないで、買いもせずに、ただ本で覚えた知識で「アンティーク鑑定ができる」なんて人を作りたくはなかったのです。
 

 しかし、それはやはり傲慢な考えだったのかもしれないと思うようになりました。自然と身につける、なんてことは、よほどの情熱や時間をかけないと難しいのです。ここは日本、西洋ではありません。代々伝わる、おばあちゃんが使っていたチューリーンや、銀のシュガーシフタースプーンや、アンティークドールは、日本の家庭にはないのです。
 

 それに美術史も同じ、ただ絵を見ていても絵がわかるようにはなりません。絵画はそもそも誰もが簡単に理解できるものではありません。そう、美術は教養なのです。ちゃんと絵がわかるようになるためには、専門的な知識(たとえばアトリビュートなど)を学ぶ必要があります。解説書を読んだり評論を読んだり・・・1つの美術展が開催されるたびに、山ほど関連図書が刊行されているのも、そういう書物の助けなしには、理解できないからなのです。
 

 そうは言っても本を出版するというのは並大抵のことではない、今や書店は年々減り続け、本を読む人口も減り続け・・・やがて紙の本は消滅するのでは、とささやかれているご時世。出版助成もなかなか「公共性」がないゆえに応募基準を満たせず、という状態でした。
 

 そんな折、美術書や豪華本の出版で定評のある、パイインターナショナルさんより、イギリスのアンティーク専門家の本を翻訳刊行するにあたって、監修をお願いできないだろうかというご依頼が、当協会を通じてありました。これは神の思し召しか!?と、当協会を挙げて全面協力させていただくことに。
 

 このような経緯でもって関わらせていただいた本書ですが、ものすごい情報量がぎっしり詰まっており、また分野によっては日本語がまだ確立していない語句も多くあり、連日連夜、原書出版社、編集者、翻訳者を交えての研究、議論が続きました。
 

 椅子の脚一つとっても、日本語では「椅子の脚」、しかし原書ではどの部分を指すかによって語彙がいくつもあります。背の部分も同じ。「家具職人はこういう言い方をする」「いや、でも一般的にその言葉は誤解を招く」といったようなことが、多くありました。語彙が少ないということは、そのものの歴史が浅い、ということでもあります。そう、日本に西洋の家具や照明器具が入ってきたのは歴史的にも新しいので、燭台の枝の数によって呼び方が違うなんて文化はなかったのでした。
 

 本書が出版されたことによって、西洋装飾美術の世界を理解する手助けの一つとなれば、こんなに喜ばしいことはありません。
 

 画像を眺めているだけでも楽しめる豪華な教本ですので、ぜひ手に取って見てくださいね。
 

 本書は当協会でも販売しています。
 
  
 


小平新文化住宅へお邪魔しました

 本年も残すところあと1週間となりましたね。本協会も1年を振り返りますと、多くのみなさまに支えられながら数々の活動をしてきました。2回の海外研修、第6回アンティーク検定試験、そして毎月1回行われているAEAOサロン倶楽部、それぞれ多くの方達にご協力・ご参加いただきました。
 
 AEAOサロン倶楽部・8月の会でゲスト講師を務められた、淺井カヨ先生のご自宅が東京都小平市にあり、この度お邪魔させていただきました。最近ではマスコミへのご出演も多い先生ですので、ご存知の方も多いでしょうか。日本モダンガール協會の代表であり、古きよきものを愛するライフ・スタイルを実践していらっしゃいます。音楽史研究家のご主人・郡修彦さんとお二人で設計を行ったそのご自宅にて、「蓄音器鑑賞会&建物紹介」が随時開催されています。
 

 文化住宅というのは、日本で1920年代から30年代にかけて流行した和洋折衷様式の住宅で、この小平新文化住宅は、見事に当時の様式を再現した建物です。
 
 1920年〜30年代といえばヨーロッパはアール・デコの時代、当時の宮様であった朝香宮様は、パリにしばらく生活し、パリで出会ったアール・デコ・スタイルをそのまま日本で再現し、朝香宮邸(現東京都庭園美術館)を造りましたが、日本の一般の中流階級では、文化住宅と呼ばれる、三角屋根のある応接間を備えた住宅を建てていたようです。玄関を入ってすぐに応接間と呼ばれる洋室があるのが特徴、その応接間にて、ゼンマイ式蓄音機による音楽鑑賞会が催されました。
 

 蓄音機で聴く音楽鑑賞会、いまではとても貴重な時間です。昭和初期の音楽、当時の宝塚の少女たちの歌声・・・しばし時が止まります。
 

 

 そして、待望の建物紹介。どこもかしこも細部にわたっての、お二人の古き良きものを愛するこだわりが垣間見られる空間、アルミサッシではない木枠の窓枠は触ってもひんやりせず、エアコンなんてなくても火鉢のぬくもりで十分に暖かいお部屋です。
 


 

 とてもシンプルで機能的なお台所。
 


 

 これが噂の「氷冷蔵庫」です。電気を使わなくても物は冷やせていたのですね。
 


 

 2階の書斎も、アンティークなアイテムが和洋たくさん。
 


 

 そしてなんと、クリスマス・ケーキというサプライズが待っていたのでした。クリスマス、やはり大正から昭和の方たちも、楽しんでいたようですよ!
 


 
 AEAOサロン倶楽部、2018年もまた淺井カヨ先生との楽しい会を企画したいと思っています。前回ご都合のつかなかったみなさまも、乞うご期待くださいね。
 

 
 


18世紀軟質磁器のセーヴル、その品格と希少性

 昨日5/2にTV東京で放映された「なんでも鑑定団」に、なんと18世紀のセーヴル磁器のカップ&ソーサー20点セットが出品されていました。
 

 この番組で西洋アンティークが出品される割合は、和骨董や中国骨董に比べると低いのですが、それでもときどき、「こんなものを蒐集していた日本人コレクターがいたんだ!」とびっくりする事があります。今回のコレクターもまさしくその1人。
 

 セーヴルは、現在でも国立窯として、エリゼ宮の食卓にも登場する高級磁器窯ですが、現在の、カオリンを用いる硬質磁器を製作する前は、軟質磁器を製作していました。フランスでカオリンが発見されたのは、マイセンより遅れること半世紀以上、それまではカオリンが発見されず、それでも磁器の製作に邁進するフランスでは、ルイ15世の愛妾・ポンパドール夫人によって、ヴァンセンヌ磁器工場をセーヴルへ移転し、王立磁器窯として、磁器の製作を推進していました。
 

 やがてリモージュ郊外でカオリンが発見され、ようやく硬質磁器の製法が解明されてからは、軟質磁器から硬質磁器へと移行、やがて軟質磁器製法はその役目を終えてしまいます。
 

 今回出品されていたのは、18世紀の、軟質磁器で作られたカップ&ソーサーで、18世紀セーヴルはといえば、これは本国フランスでもミュージアム・ピース。パリではルーヴル美術館のお隣にある、装飾美術館にて見ることができます。
 
 
 

 今回のカップ&ソーサー20点は、出品者が1000万円を費やしてのコレクションだということで、評価額1000万円をつけていましたが、さて結果は・・・700万円でした。というのも、中に4点、18世紀セーヴルではない、いわゆる「セーヴル・スタイル」が入っていたからなのです。
 

 スタイル、という言葉は、様式を意味します。つまりセーヴルの様式に沿って作られたもの。19世紀になって、18世紀のさまざまな様式がリバイバルしますから、19世紀につくられたセーヴル・スタイルは存在します。
 

 セーヴルは、ヴァンセンヌ時代から一貫して同じサインが入っており、アルファベットで年代が特定できます。もちろん18世紀セーヴルはその価値も高いので、偽物が存在しているのも事実ですが・・・。
 

 今回の出品作品、ルイ15世の最後の愛人であった、デュ・バリー夫人が愛用していたカップ&ソーサーや、ポンパドール夫人が病気で寝込んでいるときに使用するための、くぼみのあるソーサー付カップなど、鑑定士も「まさかこれが日本で見られるとは、思わなかった」と驚いていらっしゃいましたが、こういうコレクターが日本に存在している、というのは、西洋アンティークを愛する者としては、なんだか嬉しいですね。
 

 TV番組のコメントではないですが、「ぜひ、大切になさってください」!