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2018秋・海外研修がスタート!

 2018年秋「パリ・ブリュッセル海外研修」がスタートしました。
 今回のテーマは『ベル・エポック』です。
 この表現は美術史用語ではなく、社会現象を指す言葉で、文字通り『美しき時代』。ヨーロッパが世界一キラキラしていた古き良き時代を、後世の人々が懐かしむ意味で、後から使われた表現です。
 
 日本では第二次世界大戦が大きく社会を揺るがした戦争でしたが、ヨーロッパでは第一次世界大戦で国土が戦場となり、19世紀的ブルジョワの没落など、社会が一変しました。19世紀末よりその第一次大戦までを『ベル・エポック』と呼び、この時代の芸術を辿ろう、というのが今回の研修のテーマです。美術史的には、印象派、象徴主義、ナビ派、ジャポニスム、アール・ヌーヴォーなどが含まれた時代ということになります。
 
 1日目・午前は、顔合わせ&ウェルカム・コーヒーで、「初めまして」の方ともみなさん意気投合したところで、ベル・エポック時代の建築、室内装飾、絵画、彫刻、ガラス、銀器、陶磁器、宝飾品についての概要講座をアンヌ・コリヴァノフより受けます。
 
 
 
 
  

 ランチはフリーですが、全員一致で、近くのアール・ヌーヴォー内装で有名なブラスリー・シャルティエにて。ここは味的には伝統的ブラスリー、いわゆる今風のレストランではないのですが(日本人の舌には合わない人もいるのでは・・・)、フランス人の前世紀のおふくろの味っぽいのが評判なのか、フランス人には大人気で、予約を取らないため、いつも列ができています。
 
 
 
 午後はオークションハウス・ドルーオーの見学、パサージュ散策(途中でA la Mère de Familleという、美味しいショコラのお店でお買い物もして)、そして、サントゥワン蚤の市の高級マーケット「ビロン」にもスタンドを持つ、アール・ヌーヴォーのガラス専門老舗ギャラリー・トルビオンにて店主より実践講義を受けました。パリのアール・ヌーヴォーの専門家たちがみな推薦するこのギャラリーの店主ブリオ氏の熱烈なサービス講義に、研修生は熱心に質問をしつつ、ミュージアムピースを実際に触らせてもらいながら、鑑定方法を学びました。
 


 


 

M. Bourriaud, Galerie Tourbillon


 

 今回の参加者はほとんどフランス語がわかる人たちなので、通訳の説明が再確認となり、非常に濃い内容の研修となっています
 
 2日目に続きます。
 
 


ロートレックの版画ポスターの世界 ベル・エポックのパリへワープ!

 AEAOサロン倶楽部11月の会は、恵比寿にある備屋珈琲店の貴賓室にて行いました。厳選した生豆を備長炭を用いた技術で焙煎した香り高いコーヒーがアンティーク・カップでいただける、素敵なお店ですが、予約開始と同時に埋まってしまう貴賓室という名のおしゃれな個室、ラッキーにも今回、本サロンで予約をすることができました。
 

 現在三菱一号館美術館で開催中の、「パリ❤️グラフィック展ーロートレックとアートになった版画・ポスター展ー」のプレ講座としてのレクチャーを担当していただいたのは、19世紀フランス美術の専門家であり、当協会のアンティーク・スペシャリストでもある中山久美子先生。
 


  
 中山先生のお話は、版画の技法に始まり、ヨーロッパにおける版画の役割を歴史的に解説いただき、さらにリトグラフが発明されてから、写真の登場と版画のアート化に至るまでの経緯を詳しくわかりやすくご説明いただきました。アフィショマニーと呼ばれるポスターマニアの世界を、当時のポスターの画像を見ながら聞いていると、本当に19世紀末のパリへワープしたような気分になります。
 

 ポスターの3巨匠と言われたシェレ、ロートレック、ミュシャについても、それぞれのポスターの特色や代表的ポスターについて、画像を見ながら学びました。
 


 
 ポスターが、もはや情報の手段としてではなく、ポスターそのものがアートとなったこの時代は、ポスターの黄金時代、そしてパリが最も華やかでバブルで享楽的だった時代とも一致します。ベル・エポックという言葉は、そんな華やかだった時代を、懐古する呼び方です。
 

 お話の後は、ティー&スイーツタイムですが、飲み物はみなさん全員コーヒーを注文、やはり専門店のコーヒーは一味も二味も違いますね。
 

 お茶&談話をしながら、それでは当時のポスターは、昨今いくらくらいで買えるのだろうか・・・そんなお話を、パリで行われたポスターのオークションカタログを見ながら、落札額をみなさんで当てっこ。需要と供給で決まる美術品の価格ですが、複製芸術の場合、どのような点が値段に反映するのか、人気のあるポスターは?そんなお話で盛り上がります。
 

 最後にベル・エポック時代のポスターのリプロダクション品を少々ご紹介。そもそもが複製芸術ですから、複製芸術のオリジナルのリプロダクション(???)も、なかなか可愛いものがあります。絵画、たとえばモナリザのポストカードやポスターは、いかにも安っぽいお土産な匂いがしますが、ロートレックのポスターのリプロダクションのポスターは、額装するとそれなりに素敵ではないですか!?
 


 
 


5月のAEAOサロン倶楽部は、KO-MINKA国彩館で!

 AEAOサロン倶楽部、2月〜4月までは、6月の海外研修で見学する訪問地に焦点を当てたテーマにて行いましたが、いよいよ第4回アンティーク検定に向けての勉強会を開催致します。
 

 5月のサロンの会場が、ちょっと面白いスペースですので、ご紹介。
 

 最近「古民家再生」が巷で流行っていますが、その名も『CO-MINKA 国彩館』、東京都文京区にあります。ヨーロッパでいうところの、「中世の街並みにあるような、入りくんだ路地を抜けて」いくと、ポツリと古い建物が。でも不思議と周りと調和していて、近くには小さな教会も。
 

 おそらく昭和初期の建物だったのでしょうか、古民家なのですが、お客様を迎えるスペースだったと思われる応接間の「洋室」があります。天井が高く、メンテナンスは行き届いていますが、当時の雰囲気を上手に再現した内装で、なんだか落ち着きます。
 

 こちらの『CO-MINKA 国彩館』では、アナログ・レコードのコンサートやライブ、ワークショップなど様々な文化的・国際的な交流が行われているようです。
 

 わたくしどものAEAOサロン倶楽部での使用にも、アンティークの世界の普及ということで、相通じるものがあったのでしょうか、心よく応じてくださいました。
 

 アンティークも古民家も、「古いものを捨ててしまわずに、大切に、そして魅力を最大限引き出して活かしていこう」のスタンスですから!!
 

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第3回アンティーク検定・お役立ちブログ2

(前回の続きです。)
 

・これは、何でしょう?
 

 この1本だけですと、はて何だろう?ワインのカラフ?水のボトル?それともふた付の花器?
 
 いろいろな想像が浮かび上がりますね。
 もちろん、今これを手に入れて、どう使おうと、それは自由です。ただ飾っておいても、素敵な置物です。
 

 でも、当時は何の目的で作られたのでしょうか?そろそろ謎解きをしましょう。
 

 19世紀後半のヨーロッパでは、産業革命のおかげで、鉄道網が発達し、人はレジャーで旅行ができるようになりました。それまでは、人は生まれた地から半径何キロまでの間でのみ生活をし、その場所を動く事なく、一生を終えたのです。
 

 旅行するようになると、必要なものは・・・旅行セットです。
 今の日本では、手ぶらでも、ホテルのアメニティが至れり尽くせりですが、今でもヨーロッパでは、高級ホテルでも歯ブラシはないところがほとんど。
 その旅行セットも、ブルジョアのセットですし、まだプラスチックは大量生産されていなかったのですから、こんなに豪華だったりしていました。
 
 
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 さて、このふた付きボトルですが、これは化粧瓶です。
 香水瓶と表記されていることもありますが、香水、化粧水、そういったものを入れていたのでしょう。
 

・これは、どこのメーカーのものでしょう?

 baccarat_necessaire
 

 比較的よく見るものですので、知っている方もいるかもしれません。
 

 知らない場合、こういったものは、どこかにサインが入っていないのかな?と、よく裏返したりしてサインを探しますが・・・これは、入っていません。
 

 答えは、バカラ社の化粧瓶です。
 

 ちょうど昨年(2014年)、バカラ社は創業250周年を迎え、日本でも全国で展覧会が開催されていましたので、記憶に新しい方もいらっしゃるでしょう。
 

 サインが入っていないのに、バカラって分かるの?
 

 はい、分かります。
 バカラ社に、このように文献が残っており、1890年代からこのシリーズの生産が始まっていたということが分かっています。
 

baccarat_bambou
 
 
 ちなみに、バカラ社でエッチングのサインが入るのは1936年から。それ以前は、紙のシールによるサインは入っていたのですが、当時の紙のシールが残っていることはほとんどなく、従ってサインなしのものを「オールドバカラ」と呼んでいます。
 

 100年を経たガラスですから、揃っているものはあまりなく、1つ割れ、1つ壊れ・・・今ではバラけて単体で、ヨーロッパの蚤の市やアンティークマーケットでよく見かけます。もちろん揃っていれば、それだけ価値もありますので、お値段も、します。
 

 バラバラになったこういうのを1つ1つ集めていって、また揃えてみる、というのも、現代の醍醐味かもしれませんね。
 
 


パクりとコピペと、名画と工芸品

 東京オリンピックのエンブレムの盗作疑惑に続いて、トートバッグのデザインで著作権法侵害の疑いが持たれている、我が国のデザイナー。アシスタントが実際にトレースしたと白状して、販売を取り下げているものが何点かあり、日夜ネット上で炎上しています。
 

 著作権という概念が生まれたのは、それほど古いことではありません。かつて、芸術家は過去の「他人のもの」を模倣しながら、作品を生み出していたのです。
 

 美術史上で有名なものを挙げてみましょう。
 

 ・ジョルジオーネ作「眠れるヴィーナス」1510〜11
 

Giorgione
 

 ・ティツィアーノ作「ウルビーノのヴィーナス」1538
 

Tizian
 

 ・モネ作「オランピア」1863
 

olympia
 

 これは、パクリ?それとも、「影響を受けた」に過ぎないのでしょうか?
 

 また、これはどうでしょう。
 

 ・ゴヤ作「プリンシペ、ビオの丘での銃殺」1814
 

goya
 

 ・マネ作「皇帝マクシミリアンの処刑」1867
 

manet
 

 ・ピカソ「朝鮮の虐殺」1951
 

picasso
 

 絵画だけではありません。工芸品の世界にも、山ほど例があります。
 

 フランスのシャンティ窯では、柿右衛門そっくりの軟質磁器が作られています。いわゆる「柿右衛門スタイル」と呼ばれるものですね。
 

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 さて、今の時代だったら、これらもすべて「炎上」しているでしょうか!?