アカデメイア「60分で紐解く絵画」平らな画面のお話

19世紀末アール・ヌーヴォー時代の絵画シリーズ、第2回はエドゥアール・ヴュイヤールの『ベッドにて』を見ながら、「平らな画面はなぜ生まれたか」について学びました。

エドゥアール・ヴュイヤール《ベッドにて》

この世の世界は当然立体空間、三次元です。それをキャンバスや板など平面に描くのが絵画ですので、元々無理があります。如何に三次元に見えるか、という課題について取り組んだのがルネサンス時代の画家であり、消失点を一点に絞る一点透視図法というものが生み出されます。レオナルド・ダ・ヴィンチはあの有名な『最後の晩餐』で使用したこの透視図法(線遠近法)以外に、空気遠近法をも見出しました。それが『モナ・リザ』です。

遠近法は英語では「パースペクティブ」と呼び、よく私たちが「パースを取る」というような言い方をしますが、これは距離を取る、距離を感覚的に掴むということで、絵画だけでなくイラスト、漫画などでも広く利用されている方法です。

ところがこの遠近法は、19世紀よりだんだん「飽きられて」きます。新しい絵画の描き方、というものがもうしばらく生み出されていないのです。そこへ来て写真という技術が登場、これまで如何に本物そっくりに描くことを使命としていた絵画を脅かす存在として最初は恐れられるようになりました。また19世紀後半には開国と万博がきっかけで日本の美術が広く欧州へ紹介され、日本画(版画)に見られる俯瞰図や平面構成が新鮮に感じられるようになります。いわゆるジャポニスムが美術界・工芸界を席巻していきます。

そんな中で生まれた、ナビ派と呼ばれる一連の作家たち、彼らは絵を描くだけでなく装飾美術の世界にも積極的に関わってきますので、アンティーク好きの我々にとってとても親しみのあるアーティストたちでしょう。加えてボナールなどはジャポナールと呼ばれるほどの日本好き、日本の美術にならって立体感を排し、装飾性を強調した作風で有名です。

そして今回取り上げたこの1枚の絵画、エドゥアール・ヴュイヤールの『ベッドにて』、本アカデメイアで中山先生によりたっぷりとその見どころを学ぶことができました。

60分の解説後、「いつも印象派とナビ派が頭の中で混ざり合うのだけど、今回のお話を聞いてスッキリした」「ゴーギャンの絵は個人的にあまり好きではなかったけれど、なぜゴーギャンを師としてナビ派の画家たちがこのような作風を描くようになったのか、原点を本当によく理解できた」と、みなさんもやもやがスッキリしたようでした。

次回はルドンの1枚についてのお話です。ルドンと言えばやや気味の悪い作品が多い印象ですが、取り上げるのは美しいお花の絵ですので、ぜひご参加くださいね。

アカデメイア「60分で紐解く絵画」

オンライン海外講習、第2回は「 オテル・ドゥ・ラ・マリーヌ、よみがえった元王室家具保管所」

第1回のカルナヴァレ美術館に続き、第2回は話題注目のオテル・ドゥ・ラ・マリーヌ、パリの新アート・スポットをパリの講師とZoom中継で結ぶ講習です。

パリで有名な広場の一つ、コンコルド広場が現在の名前になるのに何度も改名された、その変遷と由来、コンコルド広場で行われた数々の歴史的な出来事について、残された版画や絵画、写真などでたどります。

そして長年一般には閉ざされていた旧海軍省オテル・ドゥ・ラ・マリーヌのあの建物は18世紀にはどんな用途で使われ、誰が住んでいたのか、革命後にどのように改修されて海軍省が使用していたのか、そして21世紀の現在、一般公開することになったきっかけやそのための改修、セノグラフィー、果ては改修に国家予算をいくら費やしたのか、建物の生い立ちから再生までをたっぷりと学びました。

<18世紀を再現したテーブルアートですが、実は19世紀と混在しています。>

今回は、まず最初に小栁由紀子先生より日本語での解説をいただいたことで、フランス語話者もそうでない方も、基本的なバックグラウンドが頭に入ったところで、実際に訪れたアンヌ・コリヴァノフ先生による詳細解説、こちらもいつものように熱が入りすぎ、また渾身丁寧な通訳も合わせると気づいたら21時となっていました。

ご参加のみなさま、お疲れ様でした。

さてフランスへの入国はワクチン接種済みなら陰性証明も不要、また14日よりワクチンパスの緩和に室内でのマスク着用義務も廃止、日本への帰国時の隔離も今月よりなくなり、いよいよ旅が出来そうかなと思った矢先のウクライナ戦争・・・早く地球上で平和が訪れますように。

60分で紐解く絵画 『19世紀末アール・ヌーヴォーの時代の絵画 』スタート!

1時間シリーズで行っている本協会主催講座のアカデメイアですが、今月より「60分で紐解く絵画」がスタートしました。第一部はアール・ヌーヴォー時代の絵画に焦点を当てて5回コースで行います。

アール・ヌーヴォーといえば、1900年パリ万博を頂点とした装飾工芸、ラリックのジュエリーやガレのガラス作品を思い浮かべますが、当然絵画も存在していました。ただ「アール・ヌーヴォー派」とは言わずに、印象派、象徴主義、ナビ派…などと美術史の呼ばれ方で括られています。

今回はそれらの絵画を「アール・ヌーヴォー時代」という1900年前後に区切って、一作家ずつ深く見ていく贅沢なコースです。

スタートを切るのは、トゥールーズ・ロートレック。ポスター画家として有名ですが、素晴らしい油彩画も多く残っています。彼の短い36年の生涯、自分の身体的ハンディギャップとの闘い、世紀末のパリ・モンマルトルの風俗、踊り子の描き方、ジャポニスムからの影響、動きを表現する基礎はいつどこで身に着けたのか…コンプリートなロートレックのお話を、中山久美子先生より伺いました。

次回は「平らな画面はなぜ生まれたか(エドゥアール・ヴュイヤール《ベッドにて》)」です。楽しみですね!

こちらよりお申込みいただけます。

第9回アンティーク検定講習・3級

この週末はアンティーク検定講習・3級を実施いたしました。オンライン組と会場組とのハイブリッドでの実施、幸い会場での公共ネット環境も問題なく、全員がリアルタイムで参加することができました。

初日は、アンティークとは何か、アンティーク以外の古物を表す言い方はどういう意味で使われているのか、といったアンテイーク世界への入り口から入り、陶磁器、銀器、ガラスについて歴史や製法などを学びます。アンティークでは必須とも言える銀器の刻印の読み方なども、ルーペを使って解読します。

オンラインの方へは予め鑑定物をお送りしており(そしてこれらはプレゼントになります!もちろん会場の方へも)、刻印だけではなく、文様のモチーフも読み解いていきます。

2日目・午前中は建築・家具から精装飾美術の様式について、バロックからモダニズムまでを俯瞰します。ルイ14世のヴェルサイユ宮殿から、フランク・ロイド・ライトのプレーリーハウスまでを駆け足で。

そして午後の見学は、重要文化財指定の自由学園・明日館。フランク・ロイド・ライトと遠藤新の設計です。ちょうど今日は月1回の解説付見学日。コロナ前までは学芸員の方と一緒に歩いて建物を見学していましたが、コロナ以降はソーシャル・ディスタンスを必要とするため、スライドを見ながらの解説です。今回は館長自らが解説してくださり、ライトの日本滞在時の裏話から保存修理にまつわる話まで、専門家ならではの深いお話を伺うことができました。

かつての食堂であった喫茶室で美味しいパウンドケーキとお茶をいただき、ディプロマ授与となりました。オンラインの方も動画視聴でこの建築物を学んでいただき、参加者全員が全過程を修了、ディプロマを手にし、またあたらしい専門家の卵が誕生しました!

今回のご参加者のお一人は、なんと現役大学1年生!これまでアンティーク検定試験を受験する大学生や卒業間近になって講習を受講された方はいらっしゃいましたが、講習に参加された中では今回最年少です。アンティークというと、ある程度年齢を経てから興味を持つ方が多い中、小さい頃から古いものに興味があってもっと色々知りたいと思ったというSさん、アンティークの魅力をぜひ継承していただきたいと思います。

ご参加のみなさま、2日間の集中講習お疲れ様でした。そして3級認定、おめでとうございます!

オンライン海外講習、第1回は生まれ変わったカルナヴァレ美術館

2020年の海外研修を延期してそろそろ2年になろうとしています。なかなか次回の海外研修計画が立てられない中、パリの講師とつないでのオンライン海外講習をスタートしました。

第1回目は、生まれ変わったカルナヴァレ美術館。パリ市の歴史博物館です。老朽化のため4年の改修工事を経て、コロナ禍の2021年にリニューアルオープンしました。1つの町の歴史としての博物館では世界最古で、オスマンによるパリ大改造の中、1880年に誕生しています。

コレクション数で言えば60万点を越しルーヴルを上回ると言われているこの館、そのコレクション数も膨大ですが、今回のリニューアルであらたに登場したのが看板展示室。

現在ではどの建物にも住所の番地が割り振られていますが、かつてはその建物が何屋さんであったかを示すアイコンのような看板が掲げられていたとかで、その看板展示室から見学をスタートします。

この新設された階段も、アンヌ・コリヴァノフ講師曰く、「最初に目に入ったときはとてもショックでした。伝統ある歴史博物館にはそぐわない、モダンすぎる装飾で酷いセノグラフィーだと感じたのです。でも見学をしていくうちに、この階段のおかげで美術館の順路も非常に機能的かつ効率的で、見学を終えて振り返ってみると、あの階段はもうなくてはならないもののように思えてきたのです」と。

そしてやはりこの館を紹介するには外せない、セヴィニエ侯爵夫人。この人が暮らしていたからこそ、この地が博物館になったのですが、その経緯についてたっぷりとお話しいただきました。彼女の美しいポートレートには多くの質問も寄せられました。デコルテのローブ、左右非対称な着こなし・・・

ミュシャの装飾のジョルジュ・フーケ宝飾店、コルベール・ド・ヴィラセール侯爵邸、ジョゼ・マリア・セルト・イ・バディアによる、ウェンデル夫妻の館の舞踏の間・・・ため息の出る装飾に、やはり画像だけでは物足りない、早く行かなくては!という気になりますね。

受講者の中にはフランス語を学んでいる方も多くいらっしゃって、久しぶりに生のフランス語での説明が聞けて、楽しかった、というご感想もいただきました。でもなんと言っても小栁由紀子先生の完璧かつ補って説明してくださる通訳があってこそ、理解も深まるというもの。小栁先生、有難うございました。

次回はオテル・ド・ラ・マリーヌをご紹介いただきます。