第1回アンティーク検定講習・3級

 日本全国でセンター試験が行われていたこの週末、当協会では第1回アンティーク検定講習が行われました。3級は連続2日間、集中して12単位の講習を受け、最後にチェックテストを経て、試験コースと同等の級が取得できるシステムで、2018年よりスタートしました。(従来の試験コースも並行して行っています。)
 

 たった2日間で、アンティーク・西洋装飾美術の全般を網羅するのですから、かなりハードな詰め込みの講習なのですが、参加者のみなさんの集中力とモチベーションはとても高く、次々と飛び出る質問も的を得た興味深いものだらけ、講師陣の方がヘトヘトになるほど、充実した時間でした。
 

 初日は、アンティークの定義とは何?という基本のキからスタートし、西洋美術史の通史をルネサンスから20世紀初頭まで一気に駆け抜け、ランチをはさんで、午後は宝飾美術(モード・ジュエリー)、西洋陶磁、そしてガラスについて学びました。
 

 

 

 2日目は、一時帰国中のフランス国家資格者エベニストによるヨーロピアン家具の歴史や、修復のノウハウ、そして銀器について学び、午後はモノを実際にマーケットで見て知識を身につける、という実践講座で、ちょうど開催されていた「骨董ジャンボリー」最終日へ。何箇所かのブースを解説付きで回った後は、フリータイムで各自お買い物やらディーラーさんとの会話を楽しみ、最後に「アンティーク検定3級」の試験問題をすべてクリアし、無事全員が修了証を手にしました。
 

 

 参加者の中には、すでにアンティーク・ディーラーとして活躍されている方、老舗画廊の2代目、など、とても入門級とは思えないプロとしての知識を持った方までいらして、参加者全員のテンションもとても高かったのですが、これもやはりみなさんが「この世界が、好き」という気持ちから来るものでしょうか。
 

 骨董ジャンンボリーの出展者の方々にもインタビューをしましたが、やはり誰もが口を揃えて言うのは、「好きなものを買って、覚えて、それが一番の勉強」だということ。確かにこの分野は、生活必需品目ではありません、でも、好きな人にはたまらない世界で、ハマる世界なのです・・・よね。
 

 講習参加者のみなさま、2日間の集中講座、お疲れ様でした。
 

 引き続き、2週間後にはアンティーク検定2級の講習が開催されます。
 
 

小平新文化住宅へお邪魔しました

 本年も残すところあと1週間となりましたね。本協会も1年を振り返りますと、多くのみなさまに支えられながら数々の活動をしてきました。2回の海外研修、第6回アンティーク検定試験、そして毎月1回行われているAEAOサロン倶楽部、それぞれ多くの方達にご協力・ご参加いただきました。
 
 AEAOサロン倶楽部・8月の会でゲスト講師を務められた、淺井カヨ先生のご自宅が東京都小平市にあり、この度お邪魔させていただきました。最近ではマスコミへのご出演も多い先生ですので、ご存知の方も多いでしょうか。日本モダンガール協會の代表であり、古きよきものを愛するライフ・スタイルを実践していらっしゃいます。音楽史研究家のご主人・郡修彦さんとお二人で設計を行ったそのご自宅にて、「蓄音器鑑賞会&建物紹介」が随時開催されています。
 

 文化住宅というのは、日本で1920年代から30年代にかけて流行した和洋折衷様式の住宅で、この小平新文化住宅は、見事に当時の様式を再現した建物です。
 
 1920年〜30年代といえばヨーロッパはアール・デコの時代、当時の宮様であった朝香宮様は、パリにしばらく生活し、パリで出会ったアール・デコ・スタイルをそのまま日本で再現し、朝香宮邸(現東京都庭園美術館)を造りましたが、日本の一般の中流階級では、文化住宅と呼ばれる、三角屋根のある応接間を備えた住宅を建てていたようです。玄関を入ってすぐに応接間と呼ばれる洋室があるのが特徴、その応接間にて、ゼンマイ式蓄音機による音楽鑑賞会が催されました。
 

 蓄音機で聴く音楽鑑賞会、いまではとても貴重な時間です。昭和初期の音楽、当時の宝塚の少女たちの歌声・・・しばし時が止まります。
 

 

 そして、待望の建物紹介。どこもかしこも細部にわたっての、お二人の古き良きものを愛するこだわりが垣間見られる空間、アルミサッシではない木枠の窓枠は触ってもひんやりせず、エアコンなんてなくても火鉢のぬくもりで十分に暖かいお部屋です。
 


 

 とてもシンプルで機能的なお台所。
 


 

 これが噂の「氷冷蔵庫」です。電気を使わなくても物は冷やせていたのですね。
 


 

 2階の書斎も、アンティークなアイテムが和洋たくさん。
 


 

 そしてなんと、クリスマス・ケーキというサプライズが待っていたのでした。クリスマス、やはり大正から昭和の方たちも、楽しんでいたようですよ!
 


 
 AEAOサロン倶楽部、2018年もまた淺井カヨ先生との楽しい会を企画したいと思っています。前回ご都合のつかなかったみなさまも、乞うご期待くださいね。
 

 
 

華やかなりし、セーヴル磁器

 今日は今年最後のAEAOサロン倶楽部。師走の土曜日といえば、みなさんお忙しいでしょう、と思いきや、本サロンは早い段階で満席となり、キャンセル待ちが出てしまいました。それで急遽二部制とし、午前の回・午後の回と2回に分けて行うことに。
 

 セーヴルというのは、食器のオートクチュールのようなもの、さすがにそうそう出回っているものではありません。今回、ちょうどサントリー美術館にて開催されている「六本木開館10周年記念・フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年」展を機会に、セーヴル磁器をちゃんと学んでみましょう、ということで、AEAOサロンでは初のテーマとしてセーヴルを取り上げてみました。
 
 

 主催者の色が思いっきり入り込んだ、身勝手な解釈を押し付けてしまったかもしれませんが、セーヴルの魅力はなんといっても18世紀の、軟質磁器時代にあると思っています。18世紀の装飾品・工芸品はエレガンスの頂点を極め、19世紀以降のコレクターの中にも、多くの18世紀贔屓な人たちがいて、お金持ちはこぞって18世紀の美術工芸品を買い集めていました。やはり社会の格差が大きく、富が集中していたからこそ華開いたエレガンスなのかもしれません。
 

 展覧会は、「マリー・アントワネットから草間彌生まで」と、18世紀から現代までを俯瞰する構成になっていますが、本展覧会の醍醐味はなんといっても18世紀の作品ではないか、ということで、ほぼ18世紀にフォーカスしたお話となりました。
 
 
 
 18世紀の貴族の生活、18世紀のテーブルアートの歴史などを知っていないとなかなか入り込めないアイテムもあります。そんなお話をしながら、また軟質磁器時代でしか作れない色、金彩の盛りについて、硬質磁器と軟質磁器が並行していた時代の絵付け顔料の違い、セーヴルが独自に開発した、ビスキュイと呼ばれる無釉白磁がセーヴルの花形商品であった経緯、リトロン、トランブルーズ、硬質磁器と軟質磁器はどうやって見分けられるのか、刻印はどう違う・・・と、18世紀だけでもどんどん話が尽きず、あっという間に時間は過ぎ去ってしまいます。
 

 会場は、銀座の、とあるカフェの個室、このお部屋はアンティーク調度品でセンスよく飾られた空間、本サロンにぴったりの雰囲気を醸し出しています。軽食の野菜のシフォンケーキやフレンチトーストもボリューム満点で、今回もとても楽しく充実したサロンでした。
 

 次回、来年早々のサロンは「ラリックの香水瓶」を取り上げます。
 (現在「満席」と表示しておりますが、会場のカフェは貸切にしましたので、お問い合わせください。)
 
 

ロートレックの版画ポスターの世界 ベル・エポックのパリへワープ!

 AEAOサロン倶楽部11月の会は、恵比寿にある備屋珈琲店の貴賓室にて行いました。厳選した生豆を備長炭を用いた技術で焙煎した香り高いコーヒーがアンティーク・カップでいただける、素敵なお店ですが、予約開始と同時に埋まってしまう貴賓室という名のおしゃれな個室、ラッキーにも今回、本サロンで予約をすることができました。
 

 現在三菱一号館美術館で開催中の、「パリ❤️グラフィック展ーロートレックとアートになった版画・ポスター展ー」のプレ講座としてのレクチャーを担当していただいたのは、19世紀フランス美術の専門家であり、当協会のアンティーク・スペシャリストでもある中山久美子先生。
 


  
 中山先生のお話は、版画の技法に始まり、ヨーロッパにおける版画の役割を歴史的に解説いただき、さらにリトグラフが発明されてから、写真の登場と版画のアート化に至るまでの経緯を詳しくわかりやすくご説明いただきました。アフィショマニーと呼ばれるポスターマニアの世界を、当時のポスターの画像を見ながら聞いていると、本当に19世紀末のパリへワープしたような気分になります。
 

 ポスターの3巨匠と言われたシェレ、ロートレック、ミュシャについても、それぞれのポスターの特色や代表的ポスターについて、画像を見ながら学びました。
 


 
 ポスターが、もはや情報の手段としてではなく、ポスターそのものがアートとなったこの時代は、ポスターの黄金時代、そしてパリが最も華やかでバブルで享楽的だった時代とも一致します。ベル・エポックという言葉は、そんな華やかだった時代を、懐古する呼び方です。
 

 お話の後は、ティー&スイーツタイムですが、飲み物はみなさん全員コーヒーを注文、やはり専門店のコーヒーは一味も二味も違いますね。
 

 お茶&談話をしながら、それでは当時のポスターは、昨今いくらくらいで買えるのだろうか・・・そんなお話を、パリで行われたポスターのオークションカタログを見ながら、落札額をみなさんで当てっこ。需要と供給で決まる美術品の価格ですが、複製芸術の場合、どのような点が値段に反映するのか、人気のあるポスターは?そんなお話で盛り上がります。
 

 最後にベル・エポック時代のポスターのリプロダクション品を少々ご紹介。そもそもが複製芸術ですから、複製芸術のオリジナルのリプロダクション(???)も、なかなか可愛いものがあります。絵画、たとえばモナリザのポストカードやポスターは、いかにも安っぽいお土産な匂いがしますが、ロートレックのポスターのリプロダクションのポスターは、額装するとそれなりに素敵ではないですか!?
 


 
 

2017年秋 パリ&ヴェルサイユ研修 第5日目

 いよいよ最終日。今日は雨が降るかも、と言われていたのもまた嬉しく裏切られ、太陽が!
 

 今日の午前プログラムは、パリ公設オークション、クレディ・ミュニシパルでのオークション参加です。クレディ・ミュニシパルは、ルイ16世の時代から存在する、公設質屋。ではなぜ、そこでオークションが行われるのか?その仕組みについて、説明しましょう。
 

 市民がお金を借りるのに、普通は銀行へ融資の依頼に行きます。でも、担保や信用がなくて融資が下りないケースだってあります。そんなとき、クレディ・ミュニシパルに来れば、質種と共に、お金を貸してもらえます。質種となるのは、通常は宝石とか金(きん)、でも美術品・工芸品も質種として受け入れてもらえます。それら質種の評価額を算出してもらい(それを算出するのは、国家資格を持ったオークショニアが行います)、評価額の半額を即金で貸してもらえます。
 

 1年経って、借りたお金と利息を返せば、当然質種は返してもらえます。でもお金が返せなくても、利息さえ払えば、そのまま借りたお金は借りていられるのです。例えば2000ユーロの評価額の宝石を持ち込んで、その半額の1000ユーロを借りる、1年経って借りた1000ユーロが返せなくても、1000ユーロの1年分の利息さえ払えば、またそのままお金は借りていられる、というわけで、これは何度でも更新できます。つまり利息だけ払えば永遠にお金を借り続けられることができるわけです。
 

 しかし、やがてその利息すら払えなくなる・・・と、催促がいきます。フランスの催促は容赦ありません。1度目、2度目・・・そして最終通告にも拘わらず利息の返金がない場合はどうなるか・・・その質種がオークションにかけられる、という仕組みなのです。もっとも、そんなケースは稀で、統計によれば90%のものは返却される、つまりちゃんとお金と利息を返して、元の持ち主に戻るそうです。
 

 ですから、ここで出品されているものは、すべて質流れ品。こういうものを縁起が悪い、と思う日本人もいるでしょうが、フランスでは、100年前、200年前のものが平気で出回っているアンティーク先進国、すべてのものが王侯貴族のお城からの出物であるわけではないのですから、そんなことはお構いなしです。そしてここで業者により落札されたものが、街中のアンティークショップで売られているわけですから。
 

 クレディ・ミュニシパルは、19世紀にはその役割が拡大し(つまりは人々がお金を借りに押し寄せ)、その質種も、金銀宝飾類だけではなく、生活必需品まで、そして最後にはマットレスまでもが持ち込まれました。マットレスを持ち込むということは、もう何もない、裸同然の貧困層が発生していた、という悲しい社会状況もありました。その持ち込まれたマットレスには蚤やシラミがたくさんいたので、蚤を取る蒸気の機械まで併設してあり、その機械は現在でも歴史的遺品として、(一般には入れないけれども、私たちは特別に入場許可してもらった)この施設のある場所に展示されています。
 


 

 
 さて、説明が長くなりましたが、今日のオークションは、宝石でも時計でも金製品でもなく、なんとテーブル・アートのオークション!実はこの研修内容を組み立てている夏前の段階では、クレディ・ミュニシパルのオークション・カレンダーは発表されておらず、9月に入ってから、偶然にも研修の週にテーブル・アートのオークションがあることがわかったのです。通常テーブル・アートや美術工芸品のオークションは3ヶ月に1度くらいしか行われませんので、これはもう偶然のラッキーとしか言いようがありません。
 

 すでにオンラインカタログで入札の目星をつけている研修生と共に、会場へ入ります。会場にあまり人がいないのは、今ではインターネットによるライブ・オークション参加が可能なことや、テーブル・アートはやはり宝石や金製品に比べて、参加業者が限られる、というのもあるかもしれません。
 

 クレディ・ミュニシパルのような公設オークションには、最低落札価格というのがありません。もちろん評価額はありますが、なにせ質流れ品ですから、いくらでもいいので売り切って、債権者にお金を返さなくてはならないのです。いくら以下なら売らない、なんて言えないわけです。それで、スタート価格で誰も手が挙がらないような場合、「競り下げ」が行なわれます。その競り下げのときに瞬時に手を挙げる、あるいは声を発するのがテクニックなのですが、慣れないとなかなか難しい技かもしれません。
 

 

 

 それでも主催者は、2ロットを「競り下げ」で落札し、また研修生も何ロットも落札、すっかりパリの業者の仲間入りをしてしまいました!Anneも家族から頼まれていたボヘミアンガラスに入札していましたが、思いの外上がってしまい、途中で断念。オークションというのは、競り出したら火傷しないところで上手く「手を引く」のもコツですが、ついついヒートアップしてしまいがちです。
 

 テーブル・アートなので、それほど「うぉぉぉぉ」というヒートアップになった出品物は少ないのですが、最近の傾向でしょうか、シルバーよりもステンレスの方が値段が付いてしまう、という現象がいくつか起こっていました。ゾーリンゲンとはいえINOXのカトラリーセット、評価額は60-80ユーロのものが最終的に550ユーロまで上がったときなど、さすがに「C’est fou ça!(おかしくないかい!)」という声も上がっていました。
 

 オークションが終了し、ここでホテルに戻って帰国の途につく研修生を見送り、全員一旦解散です。というのもかさばる落札物を持って、どこかに行くわけにはいかないので、一旦ホテルに戻ります。
 

 午後は当初セーヴル美術館見学の予定でしたが、直近になって、パリ6区でアンティーク市が開かれているという情報があり、ここも民度の高い地区ですから、良いものが販売されているに違いない、と急遽プログラムを変更、果たして大正解でした!クレイユ・モントローの完品の食器類が破格の値段で出ていたり、19世紀末のリキュールグラスやショットグラス、リモージュの金彩が美しい最上級のデミタスカップ、あれやこれや、またしても両手にしっかり戦利品を抱えての最終日午後、実際に現地で店主と談義しながら、値段交渉をなどもして買い物をする、これに勝る研修はないですよね!?
 

 5日間にわたって、研修に参加された皆様、お世話になった先生方、ありがとうございました。お疲れ様でした。