日別アーカイブ: 2022年3月21日

アカデメイア「60分で紐解く絵画」平らな画面のお話

19世紀末アール・ヌーヴォー時代の絵画シリーズ、第2回はエドゥアール・ヴュイヤールの『ベッドにて』を見ながら、「平らな画面はなぜ生まれたか」について学びました。

エドゥアール・ヴュイヤール《ベッドにて》

この世の世界は当然立体空間、三次元です。それをキャンバスや板など平面に描くのが絵画ですので、元々無理があります。如何に三次元に見えるか、という課題について取り組んだのがルネサンス時代の画家であり、消失点を一点に絞る一点透視図法というものが生み出されます。レオナルド・ダ・ヴィンチはあの有名な『最後の晩餐』で使用したこの透視図法(線遠近法)以外に、空気遠近法をも見出しました。それが『モナ・リザ』です。

遠近法は英語では「パースペクティブ」と呼び、よく私たちが「パースを取る」というような言い方をしますが、これは距離を取る、距離を感覚的に掴むということで、絵画だけでなくイラスト、漫画などでも広く利用されている方法です。

ところがこの遠近法は、19世紀よりだんだん「飽きられて」きます。新しい絵画の描き方、というものがもうしばらく生み出されていないのです。そこへ来て写真という技術が登場、これまで如何に本物そっくりに描くことを使命としていた絵画を脅かす存在として最初は恐れられるようになりました。また19世紀後半には開国と万博がきっかけで日本の美術が広く欧州へ紹介され、日本画(版画)に見られる俯瞰図や平面構成が新鮮に感じられるようになります。いわゆるジャポニスムが美術界・工芸界を席巻していきます。

そんな中で生まれた、ナビ派と呼ばれる一連の作家たち、彼らは絵を描くだけでなく装飾美術の世界にも積極的に関わってきますので、アンティーク好きの我々にとってとても親しみのあるアーティストたちでしょう。加えてボナールなどはジャポナールと呼ばれるほどの日本好き、日本の美術にならって立体感を排し、装飾性を強調した作風で有名です。

そして今回取り上げたこの1枚の絵画、エドゥアール・ヴュイヤールの『ベッドにて』、本アカデメイアで中山先生によりたっぷりとその見どころを学ぶことができました。

60分の解説後、「いつも印象派とナビ派が頭の中で混ざり合うのだけど、今回のお話を聞いてスッキリした」「ゴーギャンの絵は個人的にあまり好きではなかったけれど、なぜゴーギャンを師としてナビ派の画家たちがこのような作風を描くようになったのか、原点を本当によく理解できた」と、みなさんもやもやがスッキリしたようでした。

次回はルドンの1枚についてのお話です。ルドンと言えばやや気味の悪い作品が多い印象ですが、取り上げるのは美しいお花の絵ですので、ぜひご参加くださいね。

アカデメイア「60分で紐解く絵画」