日別アーカイブ: 2022年5月12日

オンライン海外講習 鬼才のジュエラー・ジャン・ヴァンドームの世界

1ヶ月ぶりのパリと繋いでのオンライン海外講習、今回はジャン・ヴァンドームの世界について行いました。ジャン・ヴァンドーム・・・誰それ?というのは普通のリアクション、フランス人でも知らない人は多く、昨年展覧会が行われるまでは宝飾業界の人や現代アートに詳しい人以外にはそれほど知られているわけではなかったのです。

Jean Vendome

ハイジュエリーメーカーとして知られるヴァン・クリーフ&アーペルは、ジュエラーのための学校を経営しています。そのエコール・ヴァン・クリーフ&アーペル(パリ)にて2021年、ジャン・ヴァンドームの展覧会が開催され、フランスでは大変な話題となりました。

展覧会の様子はこちらからも見ることができます。

この展覧会を現地で鑑賞したアンヌ・コリヴァノフより、ジャン・ヴァンドームの生い立ち、その名前の由来、職人ではなくアーティストとしてのジュエラーの哲学、シュール・レアリストたちとの関わりやその影響など、独特な世界観について教えていただきました。

ジャン・ヴァンドームの使用する素材は、決して貴石ばかりではなく、また研磨やカットのされていないsauvage(そのまんま)の状態で宝石に加工し、さらには恐竜の化石の骨やアンモナイト、蟹のハサミなども使用しています。奇抜すぎて宝石への冒涜だ!と感じた人もいたのでしょうが、いつの時代も新しいアートは既存の概念を壊して作られるもの・・・ただジャン・ヴァンドームは石と金属をとことん熟知しており、その石の最良の部分を引き立つようにデザインしているのに過ぎないのです。

この鬼才のジュエラー、ジャン・ヴァンドームの作品は昨年の展覧会により知名度も増して、今や世界各国の美術館が所蔵に躍起になっているとのこと。パリ装飾美術館ではその何点かを鑑賞することができます。

オークションでも近年値が上がっているようです。没後間もないため、まだそれほど市場に出回っていないこともありますが、すべてが1点もので、「アーティスト」的に知名度が出てきた作家の作品、今後はどのような評価を辿っていくのでしょうか。「ジャン・ヴァンドーム風」のアクセサリーはもう既にパリのショーウィンドーに並んでいそうですね。

6月のオンライン海外講習は、6月13日(月)、次回は「ルーヴル美術館のイヴ・サン・ローラン」です。