投稿者「antique-kentei」のアーカイブ

DAY3 ベトナム研修

大都会ハノイの街を知り尽くすのにはとても足りない日数ですが、後ろ髪を引かれる思いで次なる目的地へ向けて出発です。空港まで30kmの車窓からも、興味深い建築だらけな街。

今回は北部のハノイと南部のホー・チミンに加えて1泊だけ中部の街、ホイアンをプログラムに入れました。ベトナムという国を初めて訪れる人も多い中、いわゆる「東京と大阪の間にベトナム戦争の影響を受けていない古都があり、かつては貿易の街として栄え鎖国前の日本人も移住して日本人街があった、そして今やこのレトロで可愛い街並みが世界遺産となっている」と聞けば行かない手はありません、ユーラシア旅行社さんのご提案で研修の中抜きとして入れた癒しの街、ホイアン。ベトナム第3の都市、ダナンの空港より40分くらいで到着です。

この日は日本語を学んでいるというガイドさんをお願いしました。お名前はベトナム語の発音が難しいので「空」と呼んでください、ということで愛嬌のあるしっかり者の女性がダナン空港にお出迎え。やはり外国語は緊張して話すからか若干ぎこちない日本語イントネーションがAIっぽいので「AI空ちゃん」と親しみを込めたニックネームを付けてみなさんでお頼りさせて頂きました。

ダナンのNGON THI HOA でランチをいただき(ここもまたハノイに劣らず可愛い店構え、お料理も中部独特の食材などがあるようで、スタッフさんに食べ方を教わりながらトライ。手で巻いたり殻を外したりするのでビニール手袋も用意されていました)、いよいよホイアンの街へ入ります。スーツケースを詰んだ大型バスは市街地には入れないため、途中の駐車場で電気自動車に乗り換えてホテルまでの送迎です。この電気自動車、よくヨーロッパの街にもある観光用ミニ列車みたいな風貌をしているのですが、乗るとビュンビュン飛ばしてちょっと怖い!?

ホイアンのホテルも5星、ロイヤルホイアンMギャラリーという素敵なリゾートホテル。大きなバスタブが部屋の中にあり、ザ・コロニアルという雰囲気はロビーからも伝わってきます。

チェックイン後「本来は外観見学だけど17時までに着けば中にも入れる」ということで、福建会館をAI空ちゃんの解説にて見学。旧市街を歩きながらところどころで説明をいただき、行き着く先は日本人商人によって16世紀末に架けられたという来遠橋(通称日本橋)。

この辺りで日もすっかり暮れ、さすがに歩き通しで疲れてきたところで、機転の利くY添乗員の計らいで近くで予約している夕食のレストランへ交渉して休ませていただくことに。しばしの休憩タイムで足ツボマッサージを受けたり夜店の買い物に出かけたりした後、ディナーをいただきます。

なんだか食べてばかりのプログラムですが、種類も量も多いのに日本人好みのやさしい味なのか、食べられてしまう不思議。夕食中に降ったとされる雨も止み、夕涼みにふさわしくなった街から電気自動車のお迎えですぐ傍のホテルへ。今夜もぐっすり眠れそうですね。

DAY2 ベトナム研修

今日も盛りだくさんの研修日ですから、まずは朝食をたっぷりいただきます。
ビュッフェ形式の朝ごはん、なんとベトナムの伝統料理フォーやブン、生春巻、中華の点心、ヨーロピアンのペイストリー、ハムにチーズにサラダ、サンドイッチ、南国フルーツ、燻製のカルパッチョ、なんでもアリです。ドリンクもベトナムコーヒーからパッションフルーツジュースまで、種類も豊富すぎて、普段の1日で摂る食事量を朝食だけで食べそうになり、危険信号!

今日はハノイ在住の心強いアテンダー、勝恵美さんにご案内をお願いしています。勝さんは在住20年以上、バイタリティー溢れ常に笑顔で終日私たちにハノイ事情を伝授、楽しいお話や秘話まで、どこで息継ぎをするのかというくらいずっとしてくださって、おかげさまでにわかハノイ通になってしまいました。

まずは昨日見られなかったハノイ大教会(聖ジョゼフ大聖堂)へ。内部にも入り、結婚式の準備がされている中、美しいステンドグラスやパイプオルガンを目にすることができました。

続いて陶磁器好きな我々が向かうのはハノイ郊外のバッチャン村。近年バッチャン陶芸博物館が開館したというのでこちらでバッチャン焼きの歴史や製法を俯瞰し、そして一大バッチャン焼マーケットへ。自由時間ではハンターの如くに買い物する人、勝さんと窯を見学に行く人、それぞれバッチャン村を楽しんだ後、いよいよ研修の中核となるベトナム陶磁研究家の西野範子先生のレクチャーを受けるべく市内へ戻ります。

途中工事と渋滞に巻き込まれ、なんと先生自ら現地(レストラン「ハノイ・ガーデン」内個室)でセッティングをしてお待たせしてしまうという大変恐縮な状況の中、素晴らしい講義がスタート。みなさん熱心にメモをしながら拝聴いたしました。貴重な資料なども見せていただき、これまで漠然としか知らなかったベトナムの窯業についても深く知ることが出来ました。

続くランチでさらに詳しいお話をいただき、またベトナムにおけるテーブルマナーから食文化に至るまでのレクチャー付きで楽しいひと時をご一緒させていただきました。

ランチ後はベトナム美術博物館へ。考古学的作品から仏教美術まで幅広いテーマの美術館ですが、西野先生の講義を聴いたすぐ後のタイミングで復習すべく、ベトナム陶磁の展示へまっしぐら。勝さんからも補足説明をいただき、益々身近に感じられるようになりました。

昨日時間切れで入れなかった文廟へ入場し(アオザイを着てメイクを施した美しい女性たちとカメラマンがあちこちにいるのは京都の祇園も同じでしょうか)、華麗なフレンチ・コロニアル建築であるハノイのオペラハウスへ。パリのガルニエ宮のそっくり度はファサードだけでなく側面にも見られ、まさにフレンチ・コロニアル。続いて旧インドシナ銀行(現ベトナム国家銀行)のモダニズム建築も外観を鑑賞、合間にハンザ市場でアンティーク(20世紀初頭のものは、フランス陶磁の影響か色絵の絵付けも豊富です)のバッチャン焼きを買ったり、ベトナム伝統刺繍の店へ寄ったりしながらハノイ市内を愉しみました。

私たちのアプリコットも素敵なネオ・クラシック様式のホテルですが、ハノイ1の伝統と格式を誇るソフィテル・レジェンド・メトロポール・ハノイ、この歴史あるヘリテージ・ウィング(本館)の内装を一目見たいと勝さんに申し出ると、「じゃあ泊っているフリして入りましょ」とみなさんでしれ~っと(ボーイさんにドアを開けさせて!)入ってしまいました!

ホテルに一旦戻り、しばし小休憩を取った後、ホテルの目の前にあるロータス水上人形劇を楽しみます。言葉は全く分からないのですが、そしてほとんどの観客が外国人観光客であるはずなのに、なぜか理解できる寸劇。ドリフのコントのような場面も多くあり、笑いに包まれた50分でした。字幕の英語は突如フランス語に変わったりして、緩いお国柄も愛嬌です。

そして夕食へ。HOME HANOIというお洒落なレストランです。2日目にして随分慣れたベトナム料理はやはりここでも何もかもが健康的で美味しくて、シェアスタイルという個人で量をチョイスできるシステムもプレッシャーを感じなくて済むのか、みなさん結果的にはたっぷり食べて満足されていました。

勝さんには丸一日お付き合いいただいたのにも関わらず、全く疲れを見せないバイタリティにベトナムで生きる日本女性の逞しき魂を垣間見た気がします。勝さん、西野先生、本当にお世話になりました。

DAY1 ベトナム研修

いよいよ当協会初のアジアでの研修、「東洋のプチ・パリ 〜べトナムで愉しむフレンチ・コロニアル建築とアンティーク・マーケット〜」がスタート。ベトナム航空の発着する成田空港に朝6時半に集合です。早朝出発のため前夜成田のホテル宿泊組と、当日始発でいらした方全員が無事集合、コロナ禍以降4回目となるユーラシア旅行社さんでのツアー形式による海外研修ですが、チェックイン時に添乗員さん以外に2名もスタッフさんが来てくださり、頼もしい限りです。

今回の添乗員のYさんはベトナムも何度も訪れている超ベテラン、とても穏やかな語り口ですが抜かりのない差配にきめ細やかなサービス、今日から1週間お世話になります。

ベトナム航空は定時通りボーディング、ドアクローズでいざ出発…と思いきや管制塔の要請により離陸が40分遅れるとの機内アナウンス、結果的には1時間遅れにてテイクオフでした。うーん、先が思いやられる?いやいや、悪いことは先に済ませた方が!?

1時間程度なら長距離便は意外と巻き返すこともあるのですが、元々6時間の飛行時間ですからやはり1時間遅れでハノイの空港に到着、入国審査にバゲージピックアップまでお国柄を反映してか若干スローながらも無事入国しました。

まずはベトナムドンを入手、空港レートはどの国でも不利だと言われていますが社会主義国家ゆえなのかベトナムでは市中と変わらず、また円安のご時世でも幸いにもベトナムも通貨安ということで、欧米の旅行よりは少しは円安の惨めさが軽減されそうな上に、0の数が多いのでちょっとお金持ちになった気分まで味わえてしまいます。

空港の外に出ると、懐かしい(?)アジア独特の湿気と熱気が!12月と言えどベトナム北部のハノイですら生温い風。東京は空っ風の寒気ですからこれはマダムたちのお肌にも良さそうですよ。

予め手配されていたバスに乗り、ハノイ市内へ。バイクを含め交通量の多さに圧倒されながら1時間弱で市街地へ入ります。この日にハノイ大教会、文廟などを見学予定でしたがフライト遅延の上に交通渋滞のため残念ながら文廟は向かったものの外観のみ(ここは明日リベンジ)、教会も内部のステンドグラスなどが夜では見学できないため、まずはホテルへチェックインとなりました。

ハノイのホテルはホアンキエム湖畔にあるアプリコットホテル、5星です。新しいホテルで、アートホテルとして主にベトナム人アーティストのアート作品(絵画、彫刻、工芸)が600点ほどホテル館内に展示されており、客室にまでそれぞれアートが飾られている、素敵なホテルです。普段慣れていない5星ホテル、バゲージもポーターさんがバスから降ろして客室まで運んでくださいました。チェックイン時にはロビーでウェルカムドリンクもいただき、円安惨め国からやってきた私たちもにわか上流客人になった気分。

夕食は「マダムヒエンの店」というハノイでは知らない人はいないほどの有名店、フレンチ・ベトナミアンのレストランへ。ハノイ在住フランス人シェフが開いた創作ベトナム料理ということで、つい最近ではフランスのマクロン大統領も訪れたらしく、有名人の訪問写真も飾られていました。前菜の創作料理、メインのお肉、お魚、そしてデザートのブランマンジェまでとても上品で優しい味、日本時間の夜10時ごろに食べているのにみなさんしっかり完食です。

この国での大変なこと、それは「道路を渡る」行為です。車道の交通は途切れることなく、信号がない、横断歩道はあっても車もバイクも停まらないどころか速度すら緩めない、その中をうまく「運転手と目を合わせず、堂々と走らず歩いて渡り切るテクニック」がないと生きていけません。慣れないと永遠に渡れないであろうこの交通事情ですが、現地の人たちはまるで車の中に「泳ぎに行く」かの如く道路を横切って行きます、あと1秒、あと50cmでぶつかるという崖っぷちの中をかろうじてセーフ、心臓に悪いなぁとハラハラドキドキしながら全員で横になって渡りました。みなさん「1人では無理〜」と言いつつみんなで渡れば怖くない!?

ホテルはホアンキエム湖に面しており、夜のこの湖散策も素敵です。ここでTai Chiをやっている人たちもいました。

夕食後、ホテルからいただいたルーフトップバーでのドリンク券でライスワインというお米で作ったワインを食後酒代わりにいただき、長い1日が終わりました。昨夜は誰もが朝早く、飛行機に乗り遅れないか緊張していましたが今日はぐっすり眠れそうですね。

2025年冬・公式海外研修【東洋のプチ・パリ 〜べトナムで愉しむフレンチ・コロニアル建築とアンティーク・マーケット〜】DAY0

2025年の海外研修、すでに3月に南仏にて実施していますが、今年はもう1回、12月に初のアジア、ベトナムで行うことにしました。

西洋アンティークの研修でなぜアジアに、それもベトナムに行くのかと言えば、今回の目的はアジアにおけるコロニアル建築の見学です。コロニアル建築とは一般に宗主国が本国の建築様式を現地の文化・風習・気候 に合わせて変容させていく様式で、独立前のアメリカではイギリスの建築様式がアメリカの風土に合わせて作られていました。

ベトナムは1887年~1954年にかけては「フランス領インドシナ」とフランスの植民地であり、仏領インドシナ時代のフランスの建築が最も多く残されているのがホーチミンやハノイ。ベトナム戦争があったにも関わらず残されている建造物が少なくありません。またフランスの植民地になる前は中国から侵略されていた歴史もあり、中華とフレンチという二大美食の影響を受けていることもあってベトナム料理は繊細で美味しいのです。旅行中の料理が美味しいというのは大事な要素の一つですよね。

さらに今年はアール・デコ100周年、1925年のパリにおける「現代産業装飾芸術国際博覧会」(通称:アール・デコ博)が開催されて100年目にあたります。この時期のベトナムはフランス領、フランスのアール・デコ建築であるホテルに泊まることが出来ればと思い、2023年からずっとお世話になっているユーラシア旅行社さんに相談したところ、「ベトナムはいいですよ、円安の中、同様にベトナムドンも安いからマジェスティック(1925年開業、ホーチミンのアール・デコ様式建築ホテル)にも泊まれるように組んでみましょう」とご協力いただきました。

日本から6時間で行けて、時差が2時間というのも魅力的です。ヨーロッパへの15時間近い飛行時間はやはり体力的にもお財布的にも厳しいですよね。

12月の日本は沖縄を除いては真冬で、日照時間も最も少ない陰鬱な季節。そんな時に南国ベトナムで太陽に当たり、平均年齢の若い新興国でエネルギーをもらえれば、という思いで募集をしたところ今回は総勢10名での研修旅行になりました。

当協会での本来の研修スタイルは、あまり移動することなく1〜2箇所に連泊してゆっくり滞在型スタイルなのですが、今回は5泊7日で3箇所に動きます。そう何度も訪れることもなさそうならば、思い切って北部、中部、南部と異なる顔のベトナムを垣間見てみようという好奇心溢れる欲張り根性がつい出てしまいました。さてどうなることでしょう。

充実した第16回アンティーク検定講習・2級後半

アンティーク検定講習・2級の後半の部が3連休の11/1-2にかけて開催されました。後半初日は会場に集合し、ゲスト講師の青山櫻先生(アンティーク・スペシャリスト)をお呼びし、アンティーク・ジュエリー史を俯瞰した後、宝飾品・貴金属の見かたについての実地講習です。

横浜青葉台でアンティーク・ショップを構えていらっしゃる青山先生、今日の実地講習のために、惜しげもなくお店の貴重な商品を25点もお持ちくださいました。今回は全員女性の受講生でしたので、ジュエリーを見るだけでもテンションが上がるのですが、普通なら「可愛い、キレイ」という感想と共に値段を見ておしまい。ところがこの講習ではこれら25点のジュエリーをまず時代別に並べる、というタスクが課せられました!

コスチューム・ジュエリーとファイン・ジュエリーをまずは区別し、コスチューム・ジュエリーは20世紀のもの、と分けます。これは全員一致で正解です。次にファイン・ジュエリーを時代別に並べていくのですが、これがなかなか難しいですね。受講者のみなさんで「これは…こういう理由でジョージアン」「これは…黒いモーニングジュエリーのジャンルに入るのでヴィクトリアン」「このモチーフはアール・ヌーヴォー」「ローズカットのダイヤが使われていたのは…」「石の裏側が留められているクローズドセッティングだから…」「プラチナが使われた始めた初期だから…」「この原色の配色はアール・デコ時代」とジュエリー史のおさらいをしながら並べてみて、青山先生に答え合わせをしていただきました。

ルーペの使い方についても、宝石・貴金属の鑑定には欠かせないものですが、その使い方の基本を学びます。対象物を動かすのであって、ルーペを対象物に動かしてはいけない、という原則を始めて知ったという方も「見えない…おお、見える、見える、見えてきた!」と感激。

この日は複製芸術と西洋美術について、アール・ヌーヴォーとアール・デコについても学び、ランチは前回行って誰もが「またここに来たい」ということでリピートしたマハラジャの家の中にあるような内装のインド料理店にて。みなさんですっかり仲良くなりました。

2日目は午前に西洋建築と西洋家具について学び、午後は迎賓館・赤坂離宮を監修者・岡部昌幸先生の解説で見学です。岡部先生は渡辺省亭の研究の第一人者でもあるので、花鳥の間にある渡辺省亭と濤川惣助による七宝焼きについての解説には熱がこもります。

館内は先週トランプ大統領が来日していた関係で1週間以上見学不可の期間だったこともあって、今日は普段よりも来館者が多い上に3連休、ツアーで訪れている方たちも大勢いました。

かつては実験的にある部屋のみ写真撮影可、というようなことをやっていたようですが、今日は館内の撮影は不可、そうでないとどこもかしこも撮りたくなってしまいます。というのも、トランプ大統領と高市総裁の会見の写真も既に展示されていて、その時に使われた食器などもありました。内閣府、仕事早いです!

見学にもう少し時間を取りたかったのですが、この迎賓館も、そしてカフェも17時に閉まってしまうため16時過ぎにはカフェ(正式には迎賓館赤坂離宮前休憩所)へ移動、そしてお茶&ソフトクリームパフェで懇親会を行い、修了認定証が岡部先生より授与されました。

新しい鑑定士の誕生です。17時にカフェを追い出されてからも名残惜しく、カフェを出た若葉東公園内で楽しくお喋りに花が咲きましたね。受講者のみなさま、4日間の集中講習に実地講習、お疲れ様でした。