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2022年度・アンティーク・スペシャリストの会 〜デジタル・コンテンツ成果物への第一歩〜 

4月17日にアンティーク・スペシャリスト講習会が開催されました。

「アンティーク・スペシャリスト」とは、アンティーク検定1級を取得している人の中でも「常にアクティブに」西洋装飾美術の研究をされている人へ認定される最上位の資格です。

世の中には一度取得したら一生通用する資格と、常に更新する必要のある資格があります。例えば語学の資格でも、一度取得するとその肩書きが永久に履歴書に書けるものと、資格の有効期限があるものがあり、企業が語学に堪能な即戦力となる社員を募集しようと考えれば、当然後者の資格を求めます。より実態に合っているからです。

日本人の多くが取得している国家資格といえば運転免許証。これは更新制で有効期限はありますが、現実的には更新料を納めるだけで運転技能はチェックされないことから実態とかけ離れた資格であり、そのため現在高齢者の免許所持者が事故を起こしやすく問題視されていますね。更新の度に技能試験を実施すればより実態に伴った資格になるのでしょうが、母数が多い資格だけになかなか実施は難しそうです。

さて、当アンティーク検定ではこの最上位のアンティーク・スペシャリストの資格をどのように認定するか、色々と試行錯誤してきました。コロナ前までは、『AEAOサロン倶楽部』という活動を月1回定期的に開催、毎回テーマを変えての勉強会や見学などを幅広く行ってきており、誰でも参加は可能ですが1級合格後にこのサロンへ所定回数参加した方達を、恒常的に研究を続けているという位置づけでアンティーク・スペシャリストと認定していました。ところがコロナになり集まりそのものや会食の制限でAEAOサロン倶楽部の開催ができない時期が続いたことから、昨年より年1回アンティーク・スペシャリスト講習会を開催し、講習会に参加した1級取得者をその年度のアンティーク・スペシャリストと認定する新しい方式へ変更いたしました。

今年2022年度は、アンティーク・スペシャリスト講習会の2回目です。本来なら希望参加者が一同に集まり意見交換や懇親を目的とした会食ができれば理想的ですが、今回もまだまだコロナの影響が懸念される中です。残念ながら理想の形での開催とはいきませんでしたが、午前・午後の二部制とし、参加される方にそれぞれ簡単な発表を行っていただくことで、みなさんで意見交換をする場としての講習会の形といたしました。

このような形式にしたのには、理由があります。

西洋装飾美術・アンティークの世界はまだまだ学問として体系的に確立していない分野でもあり、学びたい、深めたいと思っている人たちにとっても手頃な書物や指南書のようなものが少ないのが現実です。当協会ではこれまでAEAOサロン倶楽部以外にもアカデメイア、読書会、オンライン海外講習など多くの講座を開催し、独自コンテンツを生み出してきましたが、毎回毎回フローとして完結してしまい、それらを成果物=ストックとして残すような活動をしてきませんでした。せっかく多くの時間をかけて準備をした方も、そして受講者もやがてその内容を月日とともに風化させてしまうのがもったいなく、何らかの形にして保存しておく=ストックしておく、ことができないかと考えるようになりました。

その最も古典的な方法は成果物を書籍化することですが、昨今書籍として出版するのはとても大変なことです。しかしながら現在ではデジタル出版も進んでおり、手始めにデジタルによる会報誌を発行していくことで礎を築くことができれば、という監修者の助言もあり、それではスペシャリストの方々の発表を皮切りに何らかの形でまとめていく方向で、と指針が決まりました。

ただ、このような形式にすることで今年度のアンティーク・スペシャリストの数は減るだろうと予想していました。誰かのお話を気楽に聴くだけで更新できるわけではないので、それなら参加を取り止めようと考えるのも当然のことです。とはいえこの資格は「アクティブな」資格ですので、実態の伴わない幽霊スペシャリストを増やしたいわけではありません。真のアクティブなスペシャリストを認定・育成していくために敢えてハードルを少し上げてみたところ、実にスペシャリスト=専門家、の名にふさわしい、えり抜きの精鋭スペシャリストだけが集結いたしました。

長くなりますので、各スペシャリストの発表の内容はこの後のblogにてそれぞれ紹介したいと思います。


第1回アンティーク・スペシャリスト講習会

4月25日に、第1回アンティーク・スペシャリスト講習会がオンラインにて開催されました。
一般に習い事というのは資格を取得した後、資格をゴールと考えて止めてしまうケースがありますが、本来は「生きた資格」であるべきだと考えており、アンティーク検定で1級を合格後も常に知識をアップデートされている方々を「アンティーク・スペシャリスト」と認定し、活躍いただける場を提供したり応援したりしていくための最上級の資格です。

従来の規定では、1級取得後に海外研修に参加したり、協会主催のAEAOサロンに一定回数ご参加いただいたりすることで、常に知識をアップデートしているということで「アンティーク・スペシャリスト」としてきましたが、その認定期間や方法がわかりにくいことに加え、昨年よりコロナ禍にて海外研修もAEAOサロン倶楽部も中止・延期が相次いでおり、アンティーク・スペシャリストの資格の維持方法も難しくなってきました。

そこで監修者とも相談し、年に1回1級取得者を対象とした講習会・懇親会を開催し、広くみなさんで知識や情報を共有する勉強会のような場を設け、その会に参加した人をアンティーク・スペシャリストと認定していけばよいのではないか、ということになり、今年よりこのような講習会を開催する運びとなりました。

残念ながら初回の今年は、大勢で集まって懇親・会食というのは最もやってはいけないこと、とされており、そのため懇親会食会は中止です。会場での講習もソーシャル・ディスタンスを取って定員の半数の人数で2回に分けて行い、アクリル・パーテーションに消毒液、と準備をしてきていたのですが、どんどん感染状況が悪化していき・・・地方からのご参加者も、会場参加をオンラインに切り替えるなどの対策を取っていただいたのですが、なんと開催日の4/25より緊急事態宣言が発令、会場である東京芸術劇場が全館休館と決定したのが2日前。そのため図らずも急遽オンラインでの開催になりました。ちなみに今回は3回目のリスケで、2月も3月も緊急事態宣言下につき開催を見送ってきたのです。

緊急事態宣言で予定が変更となってしまった方もいらして、また講師側でも若干のスケジュール変更が起こってしまったためリアルで参加できなかった方も出てしまったのですが、後ほどオンデマンドで講習を受けていただくことといたしました。

全員が1級取得者で豊富な知識が身についているメンバーだけあり、講習内容は非常にレベルの高いものになったと思っています。
特に第1部の「額縁の変遷と展示の法則」というテーマは、他では聞けない、本にも書いていない内容とあって、質問が相次いで出ました。スペシャリストともなれば、美術鑑賞も作品そのものだけでなく、周辺のアクセサリーにも目がいってしまうようになりますね。

2021年のアンティーク・スペシャリストして第1回の講習参加者16名の方々を、協会より公式に認定させていただくことになりました。
スペシャリストの皆様の活躍を、協会でも全面的に応援していきたいと思います。