フランス王妃マリー・ド・メディシスの冠:サンシー、ル・レジャンを題材に、ダイヤモンドの世界へ

大好評のアカデメイア「宝飾品 ~肖像画の中にみるジュエリー~」第2回はダイヤモンドについてのお話でした。マリー・ド・メディシス、言わずと知れたメディチ家のプリンセスでフランス王アンリ4世の二番目の妃ですが、この戴冠式の肖像画で彼女の王冠に留まっているのが Beau Sancy と呼ばれる35カラット弱のダイヤモンドです。

このダイヤモンドの元の持ち主である当時の収集家ボー・サンシー男爵からアンリ4世が購入したことで「ボー・サンシー」と呼ばれることになるのですが、その後巡り巡って2012年にジュネーブのサザビーズでオークションにかけられ、904万2500スイスフランで落札されました(落札者は匿名の人物)。

ちなみに同じ「サンシー」という名のついている、Le sancy(またはGrand Sancy)というダイヤモンドーこれも同じ収集家ボー・サンシー男爵由来のものですがーこちらはイギリス王、フランス王、ロシアの王子、インドの王子、と所有者が目まぐるしく移転していきますが、現在ルーヴル美術館に収蔵されており公開されています。前述のボー・サンシーよりさらに大きく、55カラット超えです。

そして同じく現在ルーブル美術館に収蔵されている、さらに大きく140カラット超えの「ル・レジャン」、この名の示す通りルイ15世の摂政(=Regent)であるオルレアン公フィリップが購入したことでこう呼ばれています。ルイ15世、ルイ16世、ナポレオン1世、ルイ18世、シャルル10世、ナポレオン3世、ウージェニー皇后と歴代の国王や皇帝が所有してきた来歴の宝飾品です。

やはりダイヤモンドは宝石の中でも単に高価というだけではなく、地位や権力が伴う石として、歴史的にも多くの逸話が残されています。

目黒先生の講座は、この後科学のお勉強へと続きます。ダイヤモンドがどのようにして地球で形成され地表に上がってくるのか、ダイヤモンドの歴史的産地はどこなのか、現在ではどのような方法で産出が試みられているのか、ダイヤモンドはどういったタイプ別に分類されているのか、そんな専門的なお話に、インドの地理に詳しくなってしまいました。

ところで5月にはロンドンでチャールズ3世の戴冠式が予定されていますが、かつて世界最大のダイヤモンドと呼ばれ、最終的にヴィクトリア女王がインドの皇帝も兼ねたことからイギリス王室のものとなったコ・イ・ヌール、これを戴冠式でカミラ王妃が王冠に使用しないことがイギリス王室から発表されたということです。このダイヤモンドの所有権を主張している声はインドのみならずパキスタン、アフガニスタンなどからも上がっており、彼らからすれば「大英帝国に略奪された」ダイヤモンド、さすがにこの時代に堂々と付けられないのでしょうね。

次回はカメオについてのお話です。お申し込みは随時受け付けています。

オークションのプレビュー

今日は株式会社毎日オークションの「西洋装飾美術」の下見会を見学してきました。5月の海外研修旅行でもロンドンやパリでサザビーズの下見会を見学する予定ですが、そもそも下見会って何でしょう?

下見会ー英語のExhibition、フランス語のExpositionを最近のオークション会社は「プレビュー」とちょっとカッコよく表現する傾向にありますが、その名の通り、オークションに出品される作品がずら~っと並んでいます。話題性のあるオークション、例えば有名人の遺品オークションなどを開催する場合は、その故人の一生をストーリー風に仕立て上げてセノグラフィーに凝る演出の下見会も存在しますが、一般的にはオークション出品物がLOT番号と落札予想価格とともに並んでいるだけです。

会場にはオークション会社のスタッフさんが配置されていて、出品作品について聞きたいことがあれば詳しく教えてくれます。オークション出品物はセカンダリー・マーケット、つまり二次流通品で新品ではないですから、そのコンディションをチェックするのも入札者側の義務、そのためルーペやランプとともにじっくり手に取って細かくチェックしている業者さんの姿も見られます。

伝統的なオークションの形では、セール当日に入札希望者は会場入りし、遠方で来られない方は電話入札や書面入札という方法を取っていましたが、コロナ禍よりネットで参加も可能なLIVEオークションが開催されているケースが増えてきました。そんなネット参加者でも、出品物のチェックにはやはり直接足を運んで実物を見たいというのがコレクターの心理でしょうか、ここは外せないステップだと思います。とはいえ最近では画像も高解像度になってきており、3D的にも見られるようなシステムが進化しているのも事実、予めオークション会社に入札希望LOTの詳細画像を依頼すると、コンプリートな画像が送られてきます。

今回の西洋装飾美術のオークション下見会、入口のところにこんな立派なシャンデリアがありました。

海外の城館などにありそうなシャンデリアやランプ、サイズ的には一般の日本の家屋には入れることすら難しそうですが、2点とも最終的に落札されていました。これが日本のどこかの館で使われていて、そして落札されたということはまたあらたな嫁ぎ先もある、ということですね。

アンティークとコレクターの世界を巡る旅へ!【オンラインLIVE説明会】

5月に予定されている海外研修旅行「アンティークとコレクターの世界を巡る旅へ!」のオンラインLIVE説明会をYouTubeのLIVE配信にて行いました。

「アンティーク」ってそもそも何ですか、という超ド入門級のご質問から、実際に研修で訪れる予定の施設のご説明、「コレクターの館」に関するお話、そして今回のツアーならではの特色など、内容面・ロジスティック面でさまざまなお話をさせていただき、その魅力を必死にお伝えしようとしたところ、予定時間を10分ほど延長してしまいました。

ご参加いただいたみなさま、夜のお疲れの中、ご拝聴いただき、本当に有難うござました。

大安、天皇誕生日のおめでたい日に、明治記念館にてAEAOサロン倶楽部

2月のAEAOサロン倶楽部「明治時代の洋館、インテリアと明治の洋食器」は、明治記念館のラウンジにて、アフタヌーン・ティーを楽しみながら開催いたしました。

当初は会場でのミニレクチャーを予定しておりましたが、せっかくのアフタヌーン・ティーが美しく飾られたテーブル上でプリントを配ったりノートを出したり、というのも無粋ですし、お茶やセイボリー、スイーツの味を楽しみながら懇親したいということもありまして、レクチャーはプレ・レクチャーとして予め録画しておいた映像を事前にお好きなときに視聴していただく、という方式にて行いました。

みなさんお忙しい日常の中、事前に視聴していただいたようで、なぜ入口に「憲法記念館」の札が出ているのかも理解された上でお集まりいただき、すっかり明治記念館の歴史が語れるようになっていましたので、残すは現場チェック!のみです。

この建物は、2回移築されています。明治14年に仮御会食所(迎賓館)として建設され、明治宮殿が竣工後の明治44年に伊藤博文へ下賜され恩賜館として移築されます。伊藤博文は翌年ハルビンにて暗殺されてしまいますが、しばらくして遺族より明治神宮に奉納され、再移築されます。この時に大日本帝国憲法に尽力を尽くした伊藤博文にちなんで「憲法記念館」となったのですが、第二次大戦後は明治神宮の迎賓施設・結婚式場として「明治記念館」となり、令和2年に東京都指定有形文化財に指定されます。

明治末期、大正時代に一体どうやって移築したのでしょう、今と違って3Dプリンタもデジタルでの設計図も描けませんし、重機の性能やパワーも現在のものほど進化していなかった時代です。でも、2度の移築に耐え、関東大震災も東京空襲にも耐え抜いたのですから、明治魂はすごいですね!

今日は大安とあって結婚式が何組もあり、格天井が見事なKINKEIの間は貸切になっていましたが、ラウンジ側でアフタヌーン・ティーを2時間半かけていただき、その後は気温も上昇したお天気のよい午後、お庭を散歩しながら幸せな人々に混じって敷地内をゆっくり散策しました。

通常アフタヌーン・ティーのお茶はポットサービスで出てくることが多いのですが、ここは一杯ずつサービスされます。もちろんフリードリンク。おかげさまで色々なフレーバーを試すことが出来、またお茶が冷めることもないので、とても優雅な2時間半でした。カップは明治時代に宮家でよく使用されていた金彩装飾。やはり格が違いますね。

授業や課題に追われて忙しい身の大学院生の方も久しぶりにご参加、またお仕事を休んで群馬県から電車を乗り継いでいらして下さった方、みなさま本当に貴重な祝日にお集まりいただき、有難うございました。

アカデメイア「宝飾品 ~肖像画の中にみるジュエリー~」がスタート!

G.I.A.G.G.の資格をもつ目黒佐枝先生によるジュエリーのアカデメイアがスタートしました。先月のAEAOサロン倶楽部ではジュエリーの原石を見て鑑別の方法などを学ぶアトリエが大好評でしたが、このアカデメイアでは更に1つ1つのジュエリーを掘り下げ、またジュエリーを歴史的に紐解いていく、奥の深い講座です。

第1回は、真珠。多くの人がご存知のように現在の主流は養殖真珠、これは1893年にMIKIMOTOの創業者・御木本幸吉氏が世界で初めて真珠の養殖に成功したことによります。そう考えると、それ以前の真珠はすべてアンティークの、つまり天然真珠だろうと考えるわけですが、どうやらそうでもなさそうです。

この肖像画を見てみましょう。17世紀に活躍した書簡家・セヴィニエ公爵夫人の肖像画です。書簡家というタイトルは、最終的に彼女が娘さんに多くの手紙(1500通にも達したそうです)を書き、最終的に残されたこれらの手紙が当時の貴族社会を知る貴重な資料となっていくことから後に付けられた職業名でしょう。

このネックレスとイヤリングの真珠、これは本当に天然真珠なのでしょうか。目黒先生のお話は謎解き形式で始まります。天然真珠の産地はどこか、当時どのようなルートでヨーロッパに入ってきたのか、この肖像画に描かれている真珠の粒のサイズはどのくらいか、当時の物価を今のレートに計算すると、この真珠のジュエリーはいくらくらいと想定されるか・・・そんな中で、模造真珠という人造真珠が17世紀に存在していたというお話に入ります。

この有名なフェルメールの絵画に描かれているイヤリングは模造真珠だろうとされています。

そして当時のやんごとなき階級の人々のジュエリー事情において、本物の天然真珠と模造真珠は両方所有していたらしいこともわかってきます。

さて、結論は・・・!?

講座ではなかなか手に入らないG.I.A.の画像もふんだんに見せていただき、また17世紀半ばから作られていた模造真珠に関する図版など、実に多岐にわたる資料を元に、真珠に関してのレクチャーをいただきました。

次回はいよいよジュエリーの王者、ダイヤモンドの世界に入ります!

今回のアカデメイアを逃した方、以降はオンデマンドの受講が可能ですので是非この貴重な授業のお申し込みをお待ちしています。