新アカデメイアは『紅茶とアフタヌーン・ティにまつわる英国の歴史』

7月よりスタートしました、新アカデメイア。今期はアンティーク・スペシャリストの青山櫻先生によるシリーズで、英国の歴史を紅茶やアフタヌーン・ティからアンティークの視点で学んでいきます。

青山櫻先生は、横浜・青葉台で実店舗を構えるアンティーク・ショップのオーナー。お母様の代から継いで現在は代表ですが、若い頃から買い付けなどで英国を何度も訪れており、ショップで扱うお品も圧倒的に英国アンティークをメインとされています。

今回のお話は、「お茶」が発酵の過程で緑茶から紅茶まで変わっていくこと、その「お茶」がヨーロッパに伝わった二つの潮流、お茶で重要なクイーン・アン女王、キャサリン・オブ・ブラガンザ王妃などの逸話、そしてお茶のためのモート・スプーン、ティー・キャディ・ボックス、シュガー・ニッパー、シュガー・シフターなどを、実際にお店にあるものも見せていただきながらご紹介いただきました。

かつてはハンドルのつかないティーボールとソーサー、実は同じ容量であり、ソーサーでお茶を飲んでいたという様子を描いた版画などを見ながら、実際にデモンストレーションで水を入れてみると…ソーサーにちゃんと入る量なのですね!

来月はコーヒーVS紅茶、青山先生の苦手なコーヒーも登場します!

本アカデメイア、オンデマンドにも対応していますので、ご興味ある方は是非お問い合わせください。

大人の銀座のアート遠足、ようやく完結!?

AEAOサロン倶楽部7月の会は、3年越しで行っている「大人の銀座のアート遠足」でした。昨年は9月に、一昨年は8月に、と何故か夏に行っており今年は7月。ただもうこの暑さ、夕方からにしましょうということで午後5時よりスタートしました。

現在の銀座はどこを歩いてもお店の中に入っても外国人ばかり、外国語が飛び交う街になってしまいましたが、これも将来から振り返ると「あの頃は外国人が昼間人口の8割を占めていた」なんていう歴史になるのでしょうか。

というのも江戸時代、一等地は日本橋で銀座は両替の町でした。明治時代に現在の銀座の原型ともいうべき舶来品ショップが誕生し、関東大震災後には「モボ・モガ」「カフェー」の流行が銀座で見られ、第二次大戦後は富裕層のショッピング街として発展します。そして高度成長期に画廊が増え始め、バブル期には300軒もの画廊が銀座に(現在は100軒ほど)。2000年以降は地上階に構えていた画廊が撤退し、海外ブランド店へと様変わり、企業の文化推進活動としてアート・スポットを構えるところが多くなりました。

今回訪れたのは3館。まずはGUCCI銀座ギャラリーの「横尾忠則 未完の自画像 – 私への旅」展を鑑賞しました。GUCCI銀座店内の7階がアートスペースになっており、そこで開催されています。予約優先ということで予め予約をして伺いました。

以前行ったエルメスやこの後行くシャネルではこういうアートホールは入口が一般のお買い物のお客様とは別になっているのですが、GUCCIでは店内のエレベーターから上がるので、ゴージャスな店内へドアマンから扉をうやうやしく開けられて、入ります(申し訳ない気分に!)。一流店ならではのそつのないエレガントな対応に、お客がサービス係より劣等な人種であることを感じる瞬間(そこまで卑下することもないですが)。

会場へ入ると、ものすごく広くはないものの天井高もあって広大な空間に入り込んだ気分に。横尾さんの鮮やかでインパクトのある油彩画(一部はシルクスクリーンやアクリル)が目に飛び込んできます。そして前回1970年の大阪万博時の作品『未完の足場』の再現も!

今日は屋上にも上がれますよ、ということで(日によってNGなこともあるそうです)屋上へ、ちょうど上がったときは私たちだけで独占できて、銀座をビルの上から鳥瞰するというなかなか出来ない光景も目に焼き付けることができました。もちろん暑いのですが、スペース内は冷蔵のように冷え冷えなので、水風呂とサウナの効果のようで、気分も爽快に!

次に向かったのはセイコーハウスホールで開催中の「佐藤 亮・荒川文彦二人展」へ。建物としては和光の中ですが、入口とエレベーターは別にあってそこから上がります。5月に国内研修旅行で金沢に行ったばかりの私たちですが、今回の作家さんはその工芸の町・石川県で制作活動をされています。展覧会は副題が―色絵と漆の間(あわい)に遊ぶ―とあって、色絵磁器と乾漆のモダンなうつわの展覧会でした。

作品は販売品でもあり触ることはできないのですが、会場内のスタッフさんが制作工程や、開けて見ないと内部の文様がわからないうつわなどを開けてくださって懇親丁寧に説明してくださいました。

こちらはプライスも記されているのですが(そのせいか写真撮影は禁止)、作品のクオリティや制作工程からするとむしろリーズナブルに思えてきます。漆の光沢など見ているだけでその高品質さが伝わってくるのですが、スタッフさんは「この仕上げは超絶技巧なんです!でもプラスチックに見えてしまう、その違いを外国の方に説明してもなかなかご理解いただけなくて」と苦笑されていました。和光美術部の企画展、さすがの一流品揃いで目の保養になりました。

次に向かったのはシャネル・ネクサス・ホール。ジャストタイムです。というのも今日は18時から展覧会担当者の作品解説が聴けるというので、うまくこの時間に行けるといいなあと企画していましたが時間通りに到着。しかも水曜日の17時~19時の間はドリンクサービスの日で、見学者にこんな素敵な飲み物を配ってくださいます。

今回の企画は、インド出身の現代アーティスト、Pushpamala N 氏の写真展です。こういういわゆる現代アートは、もちろん鑑賞者が自由な想像で見て感じるものではあるものの、時として脳内が「??」と思考停止してしまうことも多々あるので解説が入るととても有難いのです。担当者さんの熱が入ったのか、たっぷり30分ほど全ての作品について解説をしてくださいました。「フォト・パフォーマンス」という世界、「フォト・ロマンス」とフィルム・ノワールとの影響性、インドという国の映画や写真事情なども一緒に知ると、作品の見かたも変わってきますね。

時間が許せば訪れようと思っていたポーラ・ミュージアム・アネックス、すぐ近くなのですが最終入場時間を過ぎてしまったため今回は諦めて、懇親会のル サロン ド ニナスへ。午後7時からアフタヌーン・ティが、それも昼間と同じ値段でいただけるお店なのです。

昨今のアフタヌーン・ティのブームは凄まじく、もはや高級ホテルでは1万円越えは当たり前、そういえば今回の大阪・関西万博のイギリス館でのアフタヌーン・ティも話題に、というより炎上していましたが、それだけアフタヌーン・ティ文化が日本でポピュラー化してしまったというのも考えてみれば不思議ですね。

このニナスはマリー・アントワネットという紅茶で知られていますが、元々ニナスの前身であった会社はエッセンシャルオイルを抽出する企業でした(当時は工房でしょうか)。ヴェルサイユの宮廷にフレグランスを調達していて、バラやラベンダーをマリー・アントワネットが気に入ってくれたというところから、調合のノウハウを生かして紅茶のフレーバーも作っているようです。

こちらのアフタヌーン・ティはすべて甘系スイーツではなく、セイボリー(ブレゼ・ポークサンド、とうもろこしとフォアグラのキッシュ)がありましたので軽食がてらに、と思っていましたがやはり結構お腹いっぱいに。

みなさんで参院選の評価やら日本の将来やらを語り合いながら、楽しく懇談いたしました。

ご参加いただいた方々、有難うございました。これで銀座のアート・スポットもほぼ全て見尽くしたことになりますでしょうか。尤も展覧会は季節ごとに新しいものが開催されていますから、今後もこれらのアートスポットを頻繁に訪れていきたいと思います。

8月のAEAOサロン倶楽部はお休みですが、イベントを開催、そして9月は江戸東京たてもの園へ。ご参加をお待ちしております。

北関東への遠足 Vol.2

<館林編>

6月の最終週に、今度は館林在住のアンティーク・スペシャリストSさんのお招きで群馬県立館林美術館にて開催中の「鹿島茂コレクション フランスのモダングラフィック展」へ。

館林へは浅草や北千住から東武線の特急「りょうもう」に乗れば、こちらも1時間弱で着きます。本数もそれなりにあるので、もはや通勤圏内!?ところでこの電車にあるように、館林にはカルピスの工場があるのです。工場見学は大人気でなかなか予約が取れないのだそう。

駅に到着したらSさんが改札でお迎えくださり、駅の近くにあるオススメの花山うどんさんへ。定規のような太さのうどん、鬼ひも川うどんが有名なところです。ラザニアのうどんバージョンのようないでたちで、箸でつまむのにも若干の腕力・腕の力が必要です!

貝柱などの海鮮天ぷら付きの鬼ひも川うどんをいただいてすっかりお腹も一杯になったところで、群馬県立館林美術館へ。建築家・高橋靗一氏のこの建物、水面に浮かび上がる島がイメージされているとのことですが、本当に広大な自然に心が安らぎます。

展覧会はこちらも会期終了に近づいていましたが、幸い混み合っていることもなく、膨大なコレクション数にもかかわらずゆっくりと鑑賞できました。AEAOサロン倶楽部でもかつて日比谷図書文化館にて開催された「鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅」見学を行ったことがありましたが、紙ものを見るのは集中力を必要としますので、鑑賞における空間スペースは大事です。この展覧会場は天井も高く壁もホワイトで、キャプション量は多くあり全てを理解しながら見進めるのは厳しいものの、アイテムもさまざまなので気分を変えながら鑑賞することができました。

Sさんはすでに4回通われているとのこと、会期中の展示替えもありますし、本当に全てを目に焼き付け、理解するには複数回の見学が必要な展覧会です。鬼ひも川うどんで胃が、そして本展で脳がキャパいっぱいになりました。

別館「彫刻家のアトリエ」は、フランソワ・ポンポンのアトリエが再現されています。この館林美術館ではポンポンの作品を67点も所蔵しているのですが、その理由が館のテーマ「自然の人間との関わり」を探求する上で有意義な作家として注目しているということでした。ポンポンは動物をモチーフとした作品で知られており、その生涯で人物像よりも動物彫刻を多く生み出し、従来、人物像よりも格下とされてきた動物彫刻に光を当てた作家です。

ブルゴーニュ(ポンポンの生誕地)の農家風なこのアトリエも、青空の元でその魅力を映し出してくれます…が、なにせ暑い!この辺りは日本一の高温記録となる場所ですから、涼みましょう、と「エミール、水辺のワッフルカフェ」へ。全面ガラス張りで視界には永遠に続くと思われる緑、カフェ内は快適温度、名物のワッフルの季節限定版をいただきました。

秋には「ロイヤル コペンハーゲンと北欧デザインの煌めき アール・ヌーヴォーからモダンへ」展が開催されますので、またこれに合わせてAEAOサロン倶楽部で訪れてもよいかな、と考えています。

そうそう、館林には正田醤油の本社があります。正田記念館(登録有形文化財)もあり、上皇后美智子様にゆかりのある土地なのですね。日清製粉グループの製粉ミュージアムも駅前にありました。

帰りもSさんに館林駅まで送っていただき、至れり尽くせりな館林の遠足、本当に有難うございました。

北関東への遠足 Vol.1

6月も今日でおしまい、すでに真夏のような気温の日が続いています。

今月は、本協会のメンバーの方々のお招きで、水戸&笠間と館林にそれぞれお邪魔してきましたので、その様子をレポートしたいと思います。

<水戸・笠間篇>

まずは6月3週目に訪れた水戸。東京からは特急「ひたち」や「ときわ」に乗れば1時間10~20分程度で駅に着きます。駅にお迎えにいただき、そのまま車で茨城県近代美術館へ向かい、現在開催中の「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」展の鑑賞です。入場券購入時に「何でもよいのでお花や動物の柄のものをお持ちでしたら割引がございますよ」というので、日傘の柄やハンカチの柄までOKという寛容さ、なんと全員割引が適用されました!

ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまでと副題のあるこの展覧会、テキスタイルに壁紙から家具工芸品、そしてジュエリーまでと多分野に渡っての作品の展示で見応えがあります。この規模の展覧会を東京で行っていたら、こんなにゆったりしたスペースでは見られないでしょうし、会期が終わりに近づくと混み合い、繊細なジュエリーや金銀細工をショーケースに顔を近づけてじーっと鑑賞することなどできません。こういうのは本当に地方の美術館の有難いところです。

常設展も含め、建物の空間構成も素晴らしい美術館でした。

その後は車で笠間に向かいます。以前、当協会の遠足で笠間日動美術館と春風萬里荘(旧北大路魯山人邸)を訪れましたが、さすがに時間がなくて訪問できなかった茨城県陶芸美術館で「ティーカップ・メリーゴーラウンド」展が開催中ということで、こちらを訪ねる…前に、お蕎麦屋さんでランチをいただきました。美味しいお蕎麦屋さんでした。

私たちはメリーゴーランド、と呼んでいますが正確にはMerry-Go-Roundなのですね。19世紀半ばから20世紀半ばまでの約100年間に焦点を当て、ティーカップやコーヒーカップが各国の名窯ごとに紹介されています。アフタヌーン・ティ文化の流行している現在、こうしたアンティークのカップをその窯の特徴や歴史と共に俯瞰していく、楽しい展覧会でした。図録はすでに完売、でもどうやらこの後巡回で東京にも来るようですので、その時に買えるかな!?

途中で学校の生徒たちが集団で入ってきてがやがやしている瞬間があったのですが、この展覧会はそもそもが「楽しく会話をしながら」鑑賞することを推奨していたのです、これも東京なら監視員がすっ飛んできて注意されそうな場面ですが、穏やか、のんびり、ゆるふわ。

登り窯も設置されています。

併設されている陶芸ショップでは、現代陶芸家の作品も販売されていました。

そして水戸と言えば、の偕楽園へお連れ頂きました。この日、東京では34℃、この水戸でも32℃という表示でしたのでこんな暑い日にお庭の散歩が果たしてできるかしらと思いきや、森林や竹林の気温の緩和効果を身をもって体験しました。全く暑くないのです!

桜やつつじの季節には人出も多いようですが、そうでない時期は人もまばら、好文亭もゆっくり見学でき、風薫る中でのティータイムは至福の時間。

今回のお招き、訪問地からお店の選定まで完璧な遠足をオーガナイズいただいたW様ご夫妻、本当に有難うございました。

「西洋帰りのIMARI展」で里帰り品と出会う

AEAOサロン倶楽部・6月の会は、戸栗美術館で開催中の「西洋帰りのIMARI展」の見学会でした。17世紀から日本の磁器は海を渡りヨーロッパへ、そしてそれらが里帰りを始めた20世紀後半、と2度海を渡った伊万里焼、中には更なるトランジット(!)でアメリカに滞在して日本へ里帰りした品もありました。そんな里帰りを果たした伊万里焼が渋谷区松濤・戸栗美術館に所蔵・展示されています。

戸栗美術館のある松濤は渋谷駅から若干離れています。鑑賞会に先立って行われる懇親会ランチはちょうど駅と美術館の中間地点にある、渋谷の街を見下ろせる高層ビルにあるオシャレなカフェレストランLegatoへ。11時半オープンのお店ですが、15分ほど前から予約されたお客さんが次々とエレベータで15階へ到着、全面ガラス張りのビル内にある天井高のゴージャスな空間です。

乾杯のスパークリング・ドリンクにコース料理はたっぷりのサラダ、黒トリュフのクリームニョッキ、メインはチョイスでグリルチキン、ビーフ・サガリステーキ、メカジキのグリルなど。デザートのショコラ・テリーヌは羊羹並みの濃厚なテイストで満腹です。ブラックのほろ苦いコーヒーとよく合います。

食後にざっとミニ・レクチャーを終えた後、ランブリングストリート経由で松濤へ。ライブ会場やホテル、映画館などが立ち並び昼間でも若者たちが(何かのイベントに)並んでいる活気に満ちた道を歩き、松濤に足を踏み入れると今通ってきた喧騒が嘘のような静かで品の良い街に。渋谷は本当に色々な顔を持つ街だとあらためて感じます。

今日は学芸員さんによる展示解説目当てで、多くの方が待機。14時より作品を見ながらの展覧会の解説を懇親丁寧にいただきました。熱心な研究の成果で、里帰り品も今では色々なことが判明してきたようです。これは伊万里(有田)焼きの壺だけれど、恐らく蓋はマイセンかどこかのヨーロッパ窯で模して造られたものを後から付けられたのだろうとか、この瓶はヨーロッパで金属の台座が付けられ、上部には燭台が付けられていた可能性がある、など工芸ミステリーの世界へと誘われます。

アウグスト強王の東洋陶磁のコレクションは、所蔵目録によると24000点ほどあったと言いますが、当時は宝石並みの希少さと高価さの東洋磁器をこれだけ蒐集していたこの執念が、ヨーロッパ初の硬質磁器の焼成を成功させ、マイセン窯を設立させたのでしょう。

展示解説終了後は前館長夫人が顔を出して下さり、近況などを語り合い、「松濤の花園」なるマル秘情報を教えてくださいました。この高級住宅地・松濤にスペイン風のお屋敷があるのですが、そこで土日だけお花やお野菜、果物、ガチョウの卵などを販売していてお庭も見せて下さるのだとか。折角なので教えていただいた場所に行ってみると、心優しいマダムが「どうぞどうぞ、中へ入って」と花園ガーデンに入れて下さいました。松濤でこんな自然にあふれた場所があるとは!おそるべし松濤、ミステリアス度が益々高まってきました!

さて、7月は3年連続で催している「大人の銀座のアート遠足」第3弾です。暑さに負けずに街歩きを愉しみましょう。