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ロンドン&パリ、アンティークとコレクターの世界を巡る8日間~DAY 5~

さて、いよいよパリの研修がスタートします。ロンドンのガイドさんもプロ中のプロで素晴らしかったですが、パリでは一般のガイドではなく、オークショニア国家資格所持者がみなさまをご案内、そう、フランスではオークショニアとしてハンマーを叩ける資格は国家資格、それも超難関で法務省の管轄下にあります。この資格を持っていてもオークション会社で働かずアート・ディーラーになる人、大学で教える人など様々で、我らがAnne Kolivanoffはこのようにフリーランスとしてアート界でのconférencier(コンフェランスを行う人)として働いている人です。

ホテル・カスティリオーネに来ていただき、初めての方、ご無沙汰の方、オンライン授業で顔は合わせているけどリアルは初めての方、それぞれ自己紹介をしたところで、パリ・サザビーズへ向けて出発。普通に歩けば目と鼻の先ですが、このフォーブール・サン・トノレ街の18世紀から現代までの変遷、なぜオテル・パティキュリエ(個人邸宅)が多く建っているのか、オテル・パティキユリエの建築スタイルの話、そしてエリゼ宮にまつわるお話、と話が尽きません。

ロンドンでも戴冠式ムードを肌で感じてきた私たちですが、ここにもイギリス大使公邸を発見!

そしてサザビーズ・パリ。ロンドンでも下見会を見学してきましたが、パリ・サザビーズでは来週開かれるジャック・ガルシアのオークションの舞台作りが進行中、これは是非とも見るべきセノグラフィーですが今回は日程が若干合わず残念。準備会場を横目に下見会は現在オンライン・オークションが開催中のアイルランド絵画が2階に展示されていました。アイルランドの作家たちはいつくらいからどのようにして絵画を制作していたのか、印象派やポスト印象派の時代の他のアーティストの関わりなど、お話も聞けた上に、作品も比較的中堅どころでエスティメートも手の届く価格、こういうのがいつどう化けるかわからないのがアートの世界ですね。

サザビーズを後にし、次なる目的地ジャックマール・アンドレ美術館へ。このエリアは正統派のアンティークのお店がたくさん並ぶ地区で、フォーブール・サン・トノレはブランド品ショップで有名ですが、実はエリゼ宮を境にその先は高級アンティーク・ショップが立ち並ぶ屈指の名街でもあるのです。

ジャックマール・アンドレで最初に行ったのは・・・それはランチ!!もうしっかりお腹が空いているのですよね。この館内のサロン・ド・テはかつてこの館の食堂だったところ、さりげなくティエポロの壁画があったりしてびっくりなゴージャス空間でいただくキッシュとサラダにデザート。ちょっとライトミールかなと思っていましたが、一切れのポーションが日本のキッシュの2~3倍ですから、もうお腹いっぱい。

ランチでお腹を満たした後は知識で頭を満たしましょう、ということでパーマネント・コレクションをAnneの解説で回ります。ここはかつてネリー・ジャックマールとエドゥワール・アンドレ夫妻の実際に暮らしていた館。19世紀、第二帝政時代といえばフランスの資本主義が完成し、ブルジョワ富裕層らが登場、彼らは大革命で消失した18世紀の工芸品を様々な国を訪れては買い戻し、自らの屋敷にそれらを展示し訪問客に披露、やがて最後は国家に遺贈するという図式はロンドンのウォーレス・コレクションと同じですね。ただアートの目利きであるかないかはとても重要、エドゥワール・アンドレはナポレオン3世のアート・アドバイザーでもありましたから、小規模な館ながらも洗練と贅を尽くした数々のアート品・工芸品が並びます。

もう少し留まりたいところですが、残念ながら滞在は限られています。オスマン通りで私たちを待ってくれていたバスに乗り込み、今度はマレ地区のカルナヴァレへ。幸い道は混んでおらず、30分ほどで到着しました。

カルナヴァレはパリ歴史博物館です。パリの歴史を様々な角度から眺められる博物館で、数年間リニューアル工事のため閉館していましたが、ようやくオープン、その斬新な入り口のセノグラフィーも話題になりました。

かつてパリには通りの名前はありましたが番地がなかった、でもこのような看板で人はああここは肉屋さんだとか、鍵屋さん、時計屋さん、と判別ができたのですね。

先史時代から見る時間はさすがになく、バロックあたりから華やかなりしロココ、革命期、アンピールの様子、19世紀のパリ、20世紀初頭のプルーストの部屋、アール・ヌーヴォー時代のミュシャが内装を手がけここに移築されたジョルジュ・フーケの宝飾店まで駆け足で巡りました。

ヴォージュ広場に早めに停まっていたバスに乗り込み、ホテルへ。この日の夜は唯一のフリータイム、お土産を買う方は逃せない日でもありますが、実は金曜日はルーヴルが夜間営業をしており、21:45まで開館、しかも第1金曜日は無料デーなのです。あらかじめ20時入館のチケットを0円で全員分予約しておいたのですが、行きたい方を募ったところ代表を含め4名が「行く!!」と。みなさん疲れているはず、しかもルーヴルはだだっ広く歩きます。最初から「ギャラリー・アポロンとナポレオン3世のアパルトマンと18世紀の家具の部屋を見に行きますが、すべて場所がバラバラで、めっちゃ歩きますよ」との脅しにもかかわらず「それでも行く!!ついて行く!!」組4名で、1時間ちょっと、ルーヴルをマラソンしてきました。

ギャラリー・アポロンでは、アカデメイア「宝飾品 〜肖像画の中に見るジュエリー〜」で目黒先生が先日お話された、ル・サンシーとレジャンが目の当たりに見られて感激。55カラットとか140カラットのダイヤとか見たことがないのですが、このギャラリーの中で見ると不思議とここにあるのが当たり前のような気分になってきます。

メトロでコンコルド広場に戻ったら、ちょうど10時ぴったり、エッフェル塔が点灯していました。こんな下手な写真では表せられないほどキラキラ輝いていて、足の疲れも吹っ飛びました。今日だけで1万5千歩歩いていました。


オークションのプレビュー

今日は株式会社毎日オークションの「西洋装飾美術」の下見会を見学してきました。5月の海外研修旅行でもロンドンやパリでサザビーズの下見会を見学する予定ですが、そもそも下見会って何でしょう?

下見会ー英語のExhibition、フランス語のExpositionを最近のオークション会社は「プレビュー」とちょっとカッコよく表現する傾向にありますが、その名の通り、オークションに出品される作品がずら~っと並んでいます。話題性のあるオークション、例えば有名人の遺品オークションなどを開催する場合は、その故人の一生をストーリー風に仕立て上げてセノグラフィーに凝る演出の下見会も存在しますが、一般的にはオークション出品物がLOT番号と落札予想価格とともに並んでいるだけです。

会場にはオークション会社のスタッフさんが配置されていて、出品作品について聞きたいことがあれば詳しく教えてくれます。オークション出品物はセカンダリー・マーケット、つまり二次流通品で新品ではないですから、そのコンディションをチェックするのも入札者側の義務、そのためルーペやランプとともにじっくり手に取って細かくチェックしている業者さんの姿も見られます。

伝統的なオークションの形では、セール当日に入札希望者は会場入りし、遠方で来られない方は電話入札や書面入札という方法を取っていましたが、コロナ禍よりネットで参加も可能なLIVEオークションが開催されているケースが増えてきました。そんなネット参加者でも、出品物のチェックにはやはり直接足を運んで実物を見たいというのがコレクターの心理でしょうか、ここは外せないステップだと思います。とはいえ最近では画像も高解像度になってきており、3D的にも見られるようなシステムが進化しているのも事実、予めオークション会社に入札希望LOTの詳細画像を依頼すると、コンプリートな画像が送られてきます。

今回の西洋装飾美術のオークション下見会、入口のところにこんな立派なシャンデリアがありました。

海外の城館などにありそうなシャンデリアやランプ、サイズ的には一般の日本の家屋には入れることすら難しそうですが、2点とも最終的に落札されていました。これが日本のどこかの館で使われていて、そして落札されたということはまたあらたな嫁ぎ先もある、ということですね。


価値あるコレクションと、オークション

 本日(9/18)、パリの競売場・ドルーオーで開催されているオークションは、本協会の6月の研修に参加された方々には、ちょっと興味深いものです。
 

 パリの老舗レストラン、グラン・ヴェフール、ここは創業1784年と、18世紀の室内装飾をそのまま感じることのできる、素晴らしい空間です。当時最も盛り場であったパリの中心部、パレ・ロワイヤル回廊に位置し、今でもその装飾と、最高水準のフランス料理の味で、世界中からの食通を唸らせています。
 

grand_vefour_salle

 

 現在のシェフは、日本でもその名の知れているギィ・マルタン氏ですが(本協会の研修グループにも、笑顔で挨拶に来てくださいました)、以前のシェフ、レイモン・オリヴェー氏(1909-1990)、おそらくフランスの一定年齢以上の世代で、彼の名を知らない人はいないでしょう。というのも、TV番組「料理の芸術と魔術」というシリーズに13年間出演し、国民的シェフとして、その名声を博していました。
 

 レイモン・オリヴェー氏が亡くなって、もはや四半世紀が経ちますが、今回は、彼の最後の奥様であった日本人である未亡人が所有している、グラン・ヴェフールに関するあらゆるものが、オークションに出品されています。歴史的資料として、とても貴重な文献や書物(イラスト入りレシピのマケット、メニューのコレクション)、そしてグラン・ヴェフールで使用されたジャムポットとシュガーポットの大コレクションなどが、ドルーオー会場にて展示、11時よりハンマースタートです。
 

 オークションの概要
 
 オンラインカタログは、こちら
 

 カタログを見るとおわかりのように、このようなものは、時には街の蚤の市や古道具屋さんでもよく見られるものです。古いレストランのメニューカード、真鍮製のなべ、コーヒーミル、お皿・・・特別に目を引くようなものではありません。では、そのような蚤の市でも手に入りそうなものと、こうしてオークションに出品されるものの違いは何か、と言えば、ズバリ来歴・由来でしょう。
 

 今回のオークションは、レイモン・オリヴェー氏というカリスマシェフの所有物であり、かつ出どころが、正真正銘彼の未亡人からであること、そしてそのコレクションの一定量というところにあるのでしょうか。
 

 またこうしてオークションに出品される品というのは、オークショニアと鑑定士が公認した品物ですから、たとえば日本のヤフオクのような、信ぴょう性が不明なもの、というのはありません。
 

 このオークションで落札した人たちが、これらをどのように保存していくのかは、誰にもわかりません。業者さんだけでなく、一般の人々も参加し、落札することができます。すべてのLOTをまとめて落札しない限り、コレクションそのものは逸脱してしまいますが、それでも大切なものを後世に残すシステムの一つ、それがオークションの役割なのでしょう。
 
 
 レイモン・オリヴェー氏のクレープのレシピが、(途中までは無料で)こちらで見られます。1957年の放映、半世紀を経ても、なんら変わりのない伝統の味、クレープのレシピと、在りし日のオリヴェー氏の様子に、歴史を感じますね。
 
 
 


オークションというもの

 オークション会社の人から見たらたまったものではないでしょうが、美術工芸品を間近で見たい、と思ったら、オークション会場に足を運ぶことです。もっとも日本では、招待状がないと入れなかったり、業者さんに限っていたり、よほどの度胸がないと入りづらかかったり、ということがありますが、欧米では、市民が気軽に街のオークションハウスを訪れます。
 

 下見会、内覧会と謳っているときは、基本その商品をじっくり手にとって見て、状態をすべて納得した上で入札してもらうために行われるものですから、あらゆる情報を与えるように設定されています。
 

 そうは言っても、よいこと(有名人の来歴など)は比較的目立つように書いてあっても、悪いこと(瑕疵など)は、時として書かれていないこともあります。しかし、目の利く人であれば、落札予想価格から、状態や、たとえば年代的に修復されているのが当たり前の作品であるとか、熱処理をしていないわけがない石だとか、そういったことは暗黙の了解になっていますし、聞けば普通は正直にスタッフが教えてくれます。
 

 出品者にとっても、オークション会社にとっても、競争相手がいればいるだけ価格は上がりますから、なるべく多くの「潜在的入札者」がいる場所で開催しようとします。たとえば、現代アートならアメリカ、宝石や時計ならスイスや香港、というように・・・。
 

宝石のオークションの下見会

宝石のオークションの下見会


 

 残念ながら日本は、かろうじて先進国ではありますが、一般に美術品を買う人が少ないのか、世界的なオークションが開催されることは稀です。しかしながら、日本で価格を保っている近代作家の作品などは、やはり日本のオークションでよく見かけます。
 

 また、オークションが行われる場所によって、値段が異なってくるのも、よくある話。その地域にたくさんコレクターがいれば、当然その地域での価格は上昇します。
 

 それならは、すべてその地域で行えばよいのではないか、と思いがちですが、欧米の街のオークションハウスには、たとえば出品者の遺族がまとめて放出したありとあらゆるジャンルのものがあり、1点2点だけを特別なジャンルのオークションに出すまでもない、ということがあるのです。その場合、お宝であっても、まとめたジャンルのオークションではない場合、テキトーな値段で落札されてしまう、といったこともよくあります。
 

 オークション会社、というと、有名な会社の名前ばかりが頭に浮かぶ人も多いでしょうが、街のオークションでは何千円、といった金額で落札されるオークションも普通に行われているのです。
 

 当協会の6月の海外研修では、オークションハウスの見学が入っています。パリ・ドルーオー会館は、16のオークションルームがあり、日曜日以外は毎日、下見会かオークションが開催されていて、誰でも気軽に(最近は荷物検査がされているようですが)入ることができます。その日はどんなものが出ているのか・・・楽しみですね。
 
 


ホテル・オークラの家具調度品のオークションが本日スタート!

 前回のblogでも紹介しましたが、本日から、ホテル・オークラ東京の家具調度品のオークション並びに、一般販売がスタートしています。
 
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 オークションは、おなじみヤフオクの管理運営のサイトに飛ぶようになっていて、今日から入札が可能です。
 

 旧本館最高の貴賓室「ロイヤルスイート」にあったランプや、ダイニングテーブルセットなども出品されていて、1円スタートのオークション、もう既に入札が100人以上になっているものも!
  

オークションサイト
 

 オークション形式ではなく、一般販売として買えるものもあり、こちらは館内プレートからクッションまで、プレミアムイヤリングに至っては、100万円で販売されています。
 

販売サイト
 

 オークションは、相場より安く買えることも、また高く買ってしまうことも、あります。
 需要と供給のみで決まるプライスですから、決して、材料費だとか仕入れ値といった、一般のメカニズムで価格が決定されるわけではありません。
 

 元々アンティーク品は、
 

 年代 + 状態 + 品質 + 希少性 + 来歴 + 話題性 = 価値(値段)
 

 といった式があり、今回のホテル・オークラの場合、年代としてはそれほど古いわけではありませんが、来歴、話題性という要素はやはり大きいでしょう。もちろん品質も、一流ホテルの調度品ですから、廉価品ではないはず。状態は、実際に見る事ができれば一番よいのですが、写真と記載である程度判断するしかないですね。
 

 旧帝国ホテルの内装や家具調度品は、フランク・ロイド・ライトの名前と共に、既にアンティークとして価値のあるものになっています。今回のオークラの出品物も、あと50年もすれば、立派に価値あるアンティークとしての市場価値を得ている可能性は十分に高いでしょう。
 

 断捨離だなんて言っている場合ではない!?